同僚から退職の話を聞くたびに、「自分だけこの会社に残っていて大丈夫だろうか」と気になる。仕事は昨日と同じでも、職場の見え方が変わることがあります。
頼りにしていた人が辞める寂しさ、仕事が増える心配、次を決めて動く人への焦り。いくつもの気持ちが重なるため、「自分も辞めるべきか」だけを考えても答えは出にくいものです。
同僚が次々辞めて不安なときは、他の人の退職理由、自分の働く条件、会社がこれから対応する内容を分けて確認しましょう。残ることも、他社を調べることも、自分の条件に照らして選んでよい行動です。
同僚の退職は、自分も辞めるべきという結論ではない
同じ職場でも、求める仕事、家庭の事情、異動の希望、転職先との出会いは違います。本人から聞いていない退職理由を「会社に見切りをつけた」と決めつけると、自分の判断も噂に引っ張られます。
一方、影響が実際に出ているのに「気にしすぎ」と片づける必要もありません。担当が増えた、確認できる人がいなくなった、休みの予定が立てにくくなった。こうした変化は、残る自分が確認してよい仕事の問題です。
dodaが掲載する転職体験談にも、同僚の退職が働き方を見直すきっかけになった事例があります。ただし、一人の体験が、残る全員に転職を勧める根拠になるわけではありません。自分に起きている変化を別に整理します。
事実・聞いた話・心配を別の欄に書く
不安が大きいほど、将来の予想まで現在の事実のように感じられることがあります。たとえば次のように分けると、上司へ聞くべきことが見えてきます。これは架空の整理例です。
| 種類 | 書く内容の例 | 次にすること |
|---|---|---|
| 確認できた事実 | 担当者の退職日が決まり、来月から一部の顧客を引き継ぐ | 顧客数・作業・期限を確認する |
| 聞いた話 | 「他にも辞める人がいるらしい」 | 確定情報として業務計画に入れない |
| 自分の心配 | 今後ずっと穴埋めを続けることになるのでは | 暫定体制の期間と見直す条件を聞く |
退職者の人数だけで、会社の経営状態や職場の良し悪しを判断することはできません。部門の規模、期間、定年や異動を含むかによって意味が変わります。確認できない退職理由を集めるより、自分の仕事に関わる体制を聞く方が、次の行動につながります。
上司に確かめるのは、補充の予定だけではない
「採用する予定です」と聞いても、入社までは時間がかかる場合があります。確認したいのは、増員が実現するまでの仕事の扱いと、予定どおりに進まなかった場合の対応です。
- 退職者の仕事のうち、続けるもの・止めるもの・頻度を下げるものは何か。
- 暫定的な担当は誰で、どこまでを引き受けるのか。
- 専門的な判断や承認が必要なとき、誰に確認するのか。
- 採用や配置の見通しを、次にいつ共有してもらえるか。
- 想定した体制が整わない場合、どの仕事の優先順位を下げるのか。
引き継ぐ仕事を確認したいです。現在の業務を続けたままでは、○○の期限に影響します。補充までの担当範囲と、後ろに回す仕事を相談できますか。あわせて、暫定体制を見直す時期も決めたいです。
これは退職した人への不満を伝える会話ではありません。残る人が続けられる体制にする相談です。仕事の中身が見えていない場合は、引き継ぎで確認する項目から、手順・未完了案件・判断が必要な場面を整理します。
退職者に私的な理由や転職先の条件を無理に聞く必要はありません。引き継ぎと個人の選択を分けて接しましょう。
残る条件と、見直す条件を先に決める
会社の説明を聞いた後は、自分が残って働ける条件を書きます。「もう少し様子を見る」だけでは、何を確かめている期間なのか分からなくなります。次は判断メモの架空例です。
| 論点 | 残るために確かめたい条件 | 次の確認 |
|---|---|---|
| 仕事量 | 担当追加に合わせて、既存業務の一部を減らせる | 次の業務分担会議で決定内容を確認 |
| 支援 | 不明な案件を相談できる担当がいる | 引継ぎ完了前に相談先を決める |
| 成長 | 穴埋め以外に、続けたい仕事に時間を使える | 次回面談で役割の比重を相談 |
| 見通し | 採用の成否にかかわらず、体制の再検討が行われる | 会社と合意した日に進捗を確認 |
この表は、条件が満たされなかったら即退職するための採点表ではありません。改善が進んでいるか、未決が続いているかを、自分の記憶だけに頼らず確かめるために使います。
説明はあっても、担当や期限が決まらない。相談しても負担が増え続け、必要な支援が得られない。その場合は、現職の改善を待つことと並行して、他の働き方を調べてもよいでしょう。心身への影響が出ているときは、決めた見直し日まで我慢せず、社内の健康相談や医療機関など適切な相談先を利用してください。
他社を見るときも「辞める人がいない会社」を探さない
退職者が出ること自体を避けようとすると、比較の軸が曖昧になります。代わりに、欠員が出たときの補充や仕事の調整、相談できる体制、自分が続けたい仕事があるかを確認します。
求人票には良い面が書かれていても、普段の運用までは分からないことがあります。社員の経験を補足として読むなら、転職口コミの見方で、時期・職種・部署の確かめ方を確認してください。転職会議などに「人が辞める」という投稿があっても、現在の状況や自分の配属先に当てはまるかは別です。
気になる記述があれば、「直近で担当が不在になったとき、業務はどう調整しましたか」「今回の募集が決まるまで、誰がその役割を担っていますか」と質問に変えます。口コミを、応募を急ぐ理由にも、会社を断定的に否定する材料にもしないことが大切です。
40代・50代で、他社を調べる手順が分からない場合は、転職を考え始めたときの最初の確認から進められます。相談だけで情報を整理したい方は、転職を決める前の面談準備も参考にしてください。
今日決めるのは退職ではなく、一つの確認事項でよい
「あの人が辞めるなら自分も」と急ぐ必要も、「残った以上は支えなければ」とすべてを抱える必要もありません。まず、退職によって変わる自分の仕事を一つ書き、それを誰といつ確認するか決めましょう。その結果を見ながら、残る条件と次の選択肢を具体的にしていけばよいのです。
