部下のモチベーションが下がったときの1on1|原因を見極める質問12選

部下のモチベーション低下について1on1で話を聴く管理職 マネジメント

部下の発言が減った、仕事の進みが遅くなった、以前より提案が出なくなった。このような変化を見ると、上司は「やる気がない」「責任感が足りない」と判断したくなることがあります。

しかし、外から見える行動だけでは原因を特定できません。仕事量が多い、目的が分からない、裁量がない、評価に納得できない、人間関係に困っている、成長を感じられない、体調が悪いなど、異なる問題が同じような変化として現れるためです。

この記事では、部下のモチベーション低下を感じたときに、1on1で原因を決めつけずに確認する質問12選と、面談後の対応手順を解説します。上司だけで解決すべき業務上の問題と、人事・産業保健スタッフなどへつなぐべき問題も分けて考えます。

結論:励ます前に「何が変わったか」を一緒に確認する

部下のモチベーションが下がったように見えるとき、最初に行うのは激励や説得ではありません。本人の通常の状態と比べて何が変化したのかを確認し、その背景を聴きます。

厚生労働省の「こころの耳」は、部下のメンタルヘルス不調に気づく際、本人の通常の行動様式からのずれに着目することが大切だと案内しています。遅刻、口数、仕事の能率、ミスなどの変化は確認のきっかけになりますが、病名や本人の性格を推測する材料ではありません。

面談では次の順に進めます。

  1. 観察した事実を伝える
  2. 本人の認識を聴く
  3. 仕事量、裁量、役割、支援などを分けて確認する
  4. 上司が変更できることを合意する
  5. 上司だけで扱えない問題は専門窓口へつなぐ
  6. 次回の確認日を決める

「モチベーションを上げる方法」を一方的に試すより、本人が仕事を進めにくくなっている原因を取り除く方が先です。

1on1の前に整理する3つの事実

面談前に、上司の印象と確認できる事実を分けます。「最近やる気がない」は印象です。次のように、時期、行動、仕事への影響を整理します。

観点確認する内容
いつから変化が始まった時期先月の組織変更以降
何が変わったか観察できる行動週次会議での発言が減った
仕事への影響期限・品質・連携への影響確認依頼への返答が遅れ始めた

本人に伝えるときは、「最近やる気がないように見える」ではなく、次のように事実と心配を伝えます。

先月までは週次会議で改善案を出していましたが、直近3回は発言が減っています。依頼への返答にも時間がかかっているので、仕事を進めにくいことがないか気になっています。

評価を決める場ではなく、状況を理解して仕事を進めやすくする面談であることも最初に伝えてください。

部下のモチベーション低下を確認する質問12選

12問をすべて順番に尋ねる必要はありません。部下の回答に合わせ、関係する質問を選びます。質問攻めにならないよう、一つ尋ねたら回答を待ち、必要に応じて要約して認識を確認します。

最近、仕事で変わったと感じることはありますか

最初は原因を限定しない質問から始めます。上司が把握していない組織変更、顧客対応、家庭事情、業務上の不安があるかもしれません。

「特にありません」と返ってきた場合も、すぐに次の質問を重ねません。上司が観察した事実を一つだけ示し、本人がどう感じているかを確認します。

今、一番時間や気力を使っている仕事は何ですか

担当業務の一覧だけでは、本人の負担を把握できません。短時間でも精神的な負担が大きい仕事や、関係者調整に時間がかかる仕事があります。

業務量を確認するときは、件数だけでなく、難易度、割り込み、期限、判断の多さも確認します。

優先順位が分かりにくい仕事はありますか

複数の依頼が同時に届き、すべてが最優先になっていると、本人は何を終えても達成感を持ちにくくなります。上司同士で指示が競合している場合もあります。

優先順位が曖昧なら、上司が「何を先に行い、何を延期するか」を決めます。部下に自力で調整させ続けないことが重要です。

自分で決められる範囲は十分ですか

仕事の目的は与えられていても、進め方を細かく指定されると裁量を感じにくくなります。反対に、権限や判断基準がないまま「任せた」と言われても仕事は進みません。

厚生労働省の職業性ストレス簡易調査票も、仕事の量的・質的負担に加え、仕事のコントロールや上司・同僚からの支援を確認対象にしています。

裁量の問題があれば、本人が決めてよい範囲、事前相談が必要な条件、結果の確認方法を合意します。

この仕事の目的と期待する成果は明確ですか

仕事の意味を説明していても、本人が「何をもって完了か」を理解していないことがあります。目的、対象者、期限、成果物、品質基準を本人の言葉で確認します。

認識がずれていた場合は、指示を繰り返すのではなく、上司側の説明不足として修正します。部下に仕事を任せる手順では、目的と判断範囲を共有する方法を詳しく解説しています。

自分の強みを使えている仕事はありますか

不得意な仕事だけが続くと、成果を出していても自信を失う場合があります。得意な業務へ全面的に変更するのではなく、現在の仕事で強みを使える場面を増やせないか検討します。

本人が強みを答えにくい場合は、上司が観察した行動を例として示します。「顧客の曖昧な要望を整理する力が、前回の案件で役立っていた」のように具体化します。

最近、成長したと感じたことはありますか

長期間同じ業務を担当し、成長や役割の広がりを感じられないことがあります。一方で、新しい仕事が多すぎて、成長より失敗への不安が大きい場合もあります。

本人が今後身につけたい経験と、現在の業務で試せる小さな機会を結びつけます。育成対象を選ぶ際は、部下育成の優先順位を決める方法も参考になります。

成果や努力は適切に見てもらえていると感じますか

評価制度そのものだけでなく、日常のフィードバック不足が問題になっていることがあります。上司が結果しか見ていない、裏側の調整を把握していない、評価理由を説明していないなどです。

評価への不満がある場合は、すぐに正当性を説得しません。本人がどの事実を評価されていないと感じているかを確認し、評価基準、期待水準、次回までの確認方法を具体化します。

困ったときに相談できる相手はいますか

上司へ相談しにくい、チーム内に質問できる人がいない、他部署へ依頼しにくいといった問題は、仕事の停滞につながります。

「いつでも相談して」と言うだけでは十分ではありません。相談してほしいタイミング、連絡手段、定例で確認する事項を決めます。心理的安全性を高める方法も、発言後の上司の反応を見直す際に役立ちます。

チーム内の関係で仕事を進めにくいことはありますか

人間関係を聞くときは「誰と仲が悪いのか」と迫らず、仕事上の連携に限定して確認します。情報が届かない、役割分担が曖昧、会議で発言しにくい、合意した内容が守られないなど、行動と業務影響を聞きます。

ハラスメントや重大な対立が疑われる場合は、上司個人で事実認定や仲裁を完結させず、社内規程に沿って人事・相談窓口へ連携します。本人から聞いた内容を、必要なく周囲へ共有してはいけません。

上司である私に変えてほしいことはありますか

部下の問題だけを探すと、上司の指示、反応、会議運営、評価の伝え方が原因になっていても気づけません。

回答しやすくするため、選択肢を示しても構いません。

  • 指示の量や伝えるタイミング
  • 任せる範囲と確認頻度
  • フィードバックの具体性
  • 会議での発言機会
  • 他部署との調整支援

批判を受けたときに反論すると、次から率直な回答が得られなくなります。まず事実の例を聞き、変えられる行動を一つ決めます。

仕事を続ける上で、体調や働き方について配慮が必要ですか

上司は診断を行いません。睡眠、食欲、強い疲労など本人から体調の話が出た場合は、詳細な病状を聞き出すより、安全に働くために必要な配慮と相談先を確認します。

厚生労働省の「こころの耳」は、体の不調などに気づいた際、心配していることを伝え、産業医や保健師への相談を促すよう案内しています。本人が相談に抵抗を示す場合も無理強いせず、上司自身が産業保健スタッフへ対応方法を相談する選択肢があります。

緊急性が疑われる場合は、通常の1on1の範囲で判断を先延ばしにせず、会社の緊急連絡・健康管理の手順に従ってください。

1on1で避けたい5つの対応

「やる気を出して」と結論を押しつける

本人が困っている原因を確認しないまま意欲を求めると、問題を隠すようになる可能性があります。最初は原因の仮説を複数持ち、本人の話から絞ります。

話の途中で自分の経験談へ変える

上司の経験が役立つ場合もありますが、早すぎる助言は本人の説明を止めます。厚生労働省の傾聴資料も、話を遮ってアドバイスや説得を始める対応に注意を促しています。

他のメンバーと比較する

「同じ仕事をしている人はできている」という比較では、本人固有の負担や支援不足を把握できません。現在の本人と以前の本人を比べ、変化を確認します。

その場で原因を一つに決める

仕事量と人間関係、評価と成長機会など、複数の要因が重なっていることがあります。一度の面談で完全に原因を特定しようとせず、変更と観察を繰り返します。

聞いた個人情報を必要以上に共有する

面談は周囲に聞こえない場所で行い、共有が必要な場合は、原則として本人の了解を得ます。共有先、目的、内容を必要最小限にします。

面談後は「本人の宿題」だけにしない

1on1の最後に、上司と本人の行動を分けて記録します。

区分
上司が行う優先順位を整理する、他部署と調整する、権限を明確にする
本人が行う進捗を共有する、不明点を期限前に相談する、希望する経験を整理する
一緒に行う仕事量を見直す、役割を再確認する、次の挑戦を決める
専門窓口へつなぐ人事、ハラスメント相談、産業医・保健師などへ相談する

行動は多くても2〜3個に絞り、1〜2週間後に確認します。確認するのは「モチベーションが上がったか」という曖昧な感覚だけではありません。

  • 期限どおりに進められる仕事が増えたか
  • 発言や相談の回数が戻ったか
  • 残業や割り込みが減ったか
  • 優先順位の迷いが減ったか
  • 本人が必要な支援を受けられたか

変化がなければ、本人の努力不足と決めず、原因の仮説と対応を見直します。

1on1の会話例

面談の冒頭は、次のように進めます。

上司:直近3回の会議で発言が減り、二つのタスクで確認依頼が期限直前になっていました。何か仕事を進めにくくしていることがないか気になっています。今日は評価を決めるためではなく、状況と必要な支援を確認したいです。

部下:急な依頼が多く、計画した仕事が進みません。どれを優先すべきかも分からなくなっています。

上司:予定外の依頼と優先順位が負担になっているのですね。今、一番時間を使っている仕事と、止めても影響が小さい仕事を一緒に分けてもよいですか。

この例では、上司は「やる気」を評価せず、観察した事実、本人の認識、変更できる業務条件の順に確認しています。

上司だけで解決しない方がよいケース

次の場合は、通常の業務改善だけで対応しないでください。

  • 本人から心身の不調や安全への不安が伝えられた
  • ハラスメント、差別、重大な対立の相談があった
  • 長時間労働や法令・社内規程に関わる問題がある
  • 業務配慮や休職・復職など専門判断が必要である
  • 上司自身が当事者で、公平な対応が難しい

会社の人事、コンプライアンス窓口、産業医、保健師など、問題に合う窓口へつなぎます。上司は診断や事実認定を代行せず、業務上確認できる事実と必要な配慮に焦点を当てます。

まとめ

部下のモチベーションが下がったように見えても、原因を「本人のやる気」に限定しないことが重要です。仕事量、優先順位、裁量、目的、強み、成長、評価、支援、人間関係、上司の関わり、体調などを分けて確認します。

1on1では、観察した事実を伝え、本人の話を遮らず、上司が変更できることを一つ以上決めてください。面談後は行動と確認日を合意し、変化がなければ原因の仮説を見直します。

部下の意欲を高める施策全体は、部下のモチベーションを上げる9つの方法で解説しています。本記事の質問で原因を確認した後、該当する対策を選んでください。

参考資料

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