期初に決めた目標へ取り組んでいたのに、会社の方針変更で別の仕事を任せることになった。期末に元の目標を見ると未達、新しい仕事は評価シートに載っていない。このままでは、部下も上司も評価の根拠を説明しにくくなります。
期中に目標が変わったときは、変更前の成果を残したうえで、変更日以降に何を期待するかを決め直します。旧目標を消して新目標へ置き換えるだけでは、途中までの貢献も、変更が必要になった事情も失われます。
この記事は、部下の個人目標を期中に修正し、期末の評価へつなぐ管理職向けの実務案です。配点、変更できる期限、承認者、評価方法は自社制度を確認してください。チーム全体の指標を最初に設計する方法は、チームKPIの設定方法で扱っています。
最初に「前提の変更」と「進捗の遅れ」を分ける
未達になりそうだから目標を下げるのか、会社が別の仕事を優先したため目標の前提が変わったのかでは、記録すべき内容が異なります。どちらか一方とは限りません。もともと進捗に課題があり、その後に担当変更が起きた場合は、両方を残します。
| 起きたこと | 最初に確認すること | 修正の考え方 |
|---|---|---|
| 会社が施策を中止した | 中止の決定日、指示者、停止までの成果 | 中止後も旧目標の達成を求めず、期間中の扱いを承認者と決める |
| 他業務へ人員・時間を振り向けた | 追加業務と、減らした元の仕事 | 新旧両方を満額で求めず、残る範囲・期限を調整する |
| 外部条件が変わった | 影響範囲と、本人が対応できる部分 | 結果と対応行動を分け、変更が必要か検討する |
| 当初の条件は変わらず進捗が遅れた | 原因、支援不足、実行状況 | まず立て直し策を相談する。未達を消すためだけに書き換えない |
米国人事管理庁(OPM)も、業務上の目的や要件の変化に合わせて計画を調整できる柔軟性を示しています。ただし、米国政府の人事運用に関する資料であり、日本企業の配点や変更手続きを定めるものではありません。出典:OPM「Performance Management Cycle」
変更前の仕事を、その日の状態で閉じる
最初に保存するのは、期初の目標と変更直前までの記録です。最終成果に到達していなくても、検証結果、合意済みの仕様、引き継げる資料などが残っていることがあります。一方、費やした時間が長いことだけを成果としないようにします。
- 旧目標の内容・期限・達成条件。
- 変更日までに完成したものと、未完了のもの。
- その成果を誰が使えるか、何の判断に利用されたか。
- 遅れや品質上の課題があった場合の事実。
- 会社側の変更理由と、本人の対応を区別した記録。
例えば「新システムの導入」は中止でも、比較検証によって既存環境では使えない条件が分かり、導入判断に使われたなら、その事実は記録できます。ただし「大きな損失を防いだ」と金額を推測する必要はありません。分かったこと、判断に使った人、残った資料を示します。
新しい目標は、残り期間と任せる範囲から決める
期初の年間目標を、残り数か月へそのまま移さないでください。着手時点の状況、利用できる人員、前任者からの引き継ぎ、上司が決める事項によって、期待できる成果が変わります。
「新案件を成功させる」ではなく、「引き継いだ問い合わせ対応について、未処理案件の担当と回答予定を整理し、関係部署と合意する」など、本人が責任を持つ範囲を書きます。成果に時間がかかる仕事なら、期末までに確認する中間成果と、翌期に確かめる結果を分けます。
部門の計画自体も変わっている場合は、先に施策・人員・予算をつなぐ年間計画の前提をそろえます。個人の目標だけ直しても、部署の優先順位が旧計画のままでは、日々の指示が食い違います。
変更記録の例:導入企画から既存顧客支援へ
以下は説明用の架空例です。目標の重みや評語は置かず、何を残すかに絞っています。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 変更理由・適用日 | 会社が新サービスの開始を延期。10月1日から既存顧客支援を優先する |
| 旧目標の到達点 | 利用条件の比較を完了。未解決の連携課題を提示し、延期判断の資料にした。運用手順書は未完成 |
| 残す仕事・やめる仕事 | 調査資料の引き継ぎは行う。新規導入の手順書作成は停止する |
| 新目標・対象 | 引き継いだ既存顧客の未処理案件について、担当・対応範囲・回答予定を整理し、顧客支援責任者の確認を受ける |
| 上司の支援 | 部署間で担当が決まらない案件の調整、必要なシステム権限の手配 |
| 期末に確認する記録 | 対応一覧、合意記録、引き継ぎ資料。顧客側の回答待ちは別に記す |
| 評価上の扱い | 旧目標の期間中の成果と新目標の成果を残し、配点等は制度に沿って承認者が確定する |
半年ずつ担当したから必ず半分ずつ評価する、という共通の正解はありません。期間だけでなく役割の大きさや制度上の重みも関係します。上司の独断で計算式を作らず、変更が認められる手続きと本人への説明をそろえてください。
面談では、追加する期待と外す期待を同時に伝える
部下が確認したいのは「新しい仕事をやること」だけではありません。「前の仕事が未達として残るのか」「結局どちらも求められるのか」が曖昧だと、旧業務を手放しにくくなります。
伝え方の例:会社の方針変更で、来月から顧客支援を優先します。ここまでの調査結果は記録して残します。導入手順書はいったん止め、引き継ぎだけをお願いします。新しい目標の対象と、私が調整することを今日そろえたいです。評価上の重みは人事と確認し、確定内容を改めて共有します。
本人が異なる事実を持っている場合は、その場で確認します。内容を読み合わせたことと、評価に完全に納得したことは別です。合意していない点まで「合意済み」とせず、未決事項、確認する人、返答予定を記録してください。
期末になって変更漏れに気づいたら
後から新しい目標が最初から存在したように書くことは避けます。実際の指示メール、面談記録、担当変更日、納品物を集め、いつ何が変わったかを復元します。記録がない部分は不明とし、本人の説明だけ、上司の記憶だけで断定しません。
正式な変更期限を過ぎている場合は、人事や評価承認者へ「制度上どう扱うか」を確認します。追加業務を評価できないと決めつけることも、独自の加点を約束することも避けます。記録の不足に上司側の責任があるなら、その事情も伝えます。
評価理由の文章は、事実・影響・評価理由・期待に分ける評価コメントの書き方で整えられます。まずは目標シートの上書きではなく、変更日までの到達点と、明日から外す仕事を一枚に残すところから始めてください。
