仕事内容は好きなのに、片道1時間半の通勤だけがつらい。朝は早く家を出て、帰宅したら食事と入浴で一日が終わる。「通勤だけを理由に転職を考えるのは甘えだろうか」と迷うこともあるでしょう。
通勤は、仕事を続けられるかを判断するための大切な条件です。好きな仕事を辞めるか、今の通勤を我慢するかの二択にせず、負担を整理し、社内の調整余地と転職先の条件を順番に確かめていきましょう。
片道1時間半よりも、週の合計と生活への影響を見る
同じ片道1時間半でも、週5日出社する人と週2日の人では負担が違います。座れるか、乗り換えが多いか、混雑する時間帯かによっても、つらさは変わります。
まずは自宅を出てから職場に着くまでの時間を使い、往復時間と出社日数を整理してください。次の表は、片道1時間半、往復3時間が毎回かかる場合の単純計算です。残業や出張、遅延による追加時間は含んでいません。
| 1週間の出社日数 | 週の通勤時間 | 4週間の通勤時間 |
|---|---|---|
| 5日 | 15時間 | 60時間 |
| 3日 | 9時間 | 36時間 |
| 2日 | 6時間 | 24時間 |
これは一般的な月平均や労働時間の計算ではなく、自分の時間の使い方を見るための例です。祝日や休暇がある月は、実際に出社する日数で計算し直します。
加えて、一週間だけでも「帰宅時刻」「睡眠に使えた時間」「通勤で困った場面」を記録してみましょう。帰宅後に家事ができないのか、子どもの迎えに間に合わないのか、混雑する車内に長くいることがつらいのか。困りごとがはっきりすると、必要な対策を選びやすくなります。
減らしたいのは、通勤の回数・長さ・混雑のどれか
負担を減らす方法は、一つではありません。会社の制度や業務内容によって使える選択肢は異なるため、まず規程と所属部署の運用を確認します。
- 回数を減らす:在宅勤務の日を設ける、外出予定と出社日をまとめる。
- 長さを減らす:近い拠点やサテライトオフィスを使う、勤務地変更の可能性を相談する。
- 混雑を避ける:時差出勤や利用可能な勤務時間制度を確認する。
時差出勤で混雑を避けられても、往復3時間が残る場合があります。逆に、移動時間は同じでも座れる時間帯に変わることで続けやすくなる人もいます。自分が困っている点に合う方法かを確かめることが大事です。
引っ越しが選べるなら、家賃の差だけでなく初期費用、同居家族の通勤・通学、日常の支援への影響も別に整理します。勤務地が変わる可能性がある職場では、今の通勤先に近づくだけで長期的に解決するとは限りません。
上司への相談は、続けたい仕事と試したい方法をセットにする
「通勤が大変なので何とかしてください」だけでは、上司も調整案を考えにくくなります。現在の負担に加えて、どの仕事なら場所や時間を調整できるか、自分なりの案を用意します。
在宅勤務を相談する仮想例
今の担当業務は続けたいのですが、片道1時間半の通勤で帰宅が遅くなり、生活との両立が難しくなっています。資料作成が中心の水曜日を在宅勤務にすることは可能でしょうか。対面対応が必要な業務は出社日にまとめ、連絡方法と進捗の報告方法を決めたうえで、まず4週間試せないか相談したいです。
試行期間はあくまで提案の例です。実施できる場合は、対象業務、出社が必要な日、連絡方法、成果の確認方法をすり合わせます。自分が不在の日だけ同僚に対面業務が偏らないかも、あわせて確認しましょう。
厚生労働省のテレワーク資料でも、導入前に労使で話し合い、対象業務や実施頻度、手続き、連絡方法などのルールを定めることが示されています。在宅勤務は本人の希望だけで実施日が決まるものと考えず、職場の運用を確認して相談します。出典:厚生労働省「テレワークガイドラインを改定しました」(導入に際しての留意点)。
在宅勤務が難しい場合は、「時差出勤なら可能か」「近い拠点で同じ仕事をする余地があるか」と、負担に合う代案を一つずつ確かめます。断られた理由が業務上の制約なのか、申請条件を満たしていないのか、今は判断できないのかも聞いておくと、次の判断につながります。
改善が難しければ、通勤条件を決めて転職先を比較する
社内の調整では生活が成り立たない、または調整の見通しが立たないなら、通勤を理由に転職先を調べて構いません。仕事が好きなことと、今の場所で働き続けられることは分けて考えられます。
求人を見る前に、譲れない条件を具体化しましょう。「近い会社」だけでは判断がぶれます。たとえば「自宅から職場まで片道60分以内」「週2日までの出社なら片道90分も検討」「家族の対応がある日は19時までに帰宅したい」のように、生活に必要な形にします。これらの数値は基準の例であり、誰にでも適した上限ではありません。
そのうえで、今の仕事で続けたい内容も書きます。通勤が短くても、希望する仕事がほとんどできないなら別の悩みが生まれます。担当業務、給与、実際の残業も並べて、日常生活がどう変わるかを見てください。
紹介された求人を比較する場合は、転職エージェントから紹介された求人の選び方も参考になります。管理職向けの比較記事ですが、情報が足りない条件を質問に変える手順は、通勤を重視する場合にも使えます。
「在宅勤務可」「勤務地は本社」の先まで確認する
求人票に在宅勤務と書かれていても、自分の配属先でいつから何日使えるかまでは分からない場合があります。制度があることと、入社後の自分が利用できる条件を分けて聞きましょう。
| 確認したい点 | 質問の例 | 判断に使う情報 |
|---|---|---|
| 出社頻度 | 配属予定チームでは、現在週何日の出社が基本ですか。 | 部署の通常運用と例外 |
| 入社直後 | 研修中や試用期間中は、出社日数が変わりますか。 | 増える期間と通勤への影響 |
| 臨時の出社 | 急な出社が必要になる場面と、通知のタイミングを教えてください。 | 家族の予定などとの両立 |
| 勤務する場所 | 雇入れ直後の勤務地と、変更される可能性のある範囲を確認できますか。 | 支社、客先、転勤などの可能性 |
厚生労働省は、2024年4月から募集時等に明示する事項として、就業場所の変更の範囲などを追加しています。最初の勤務地だけで判断せず、将来の配置転換等を含む記載も確認しましょう。出典:厚生労働省「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」。
選考が進んだら、口頭の説明と提示された労働条件を照合します。曖昧なままなら、承諾前に担当者へ確認し、回答を残しておくと整理しやすくなります。また、実際の出社時刻に合わせて経路検索を行い、駅からの徒歩や乗り換えの待ち時間まで含めて考えてください。
口コミは部署や投稿時期によって前提が違います。「在宅勤務ができた」という投稿を、そのまま現在の利用条件と受け取らず、最新の運用を採用担当者に確認する材料にします。詳しくは転職口コミの見方を参照してください。
仕事を続けるために、通勤条件を見直してよい
片道1時間半だから全員が辞めるべき、という基準はありません。出社回数を減らせば続けられるのか、時間帯の調整で楽になるのか、通勤距離そのものを変える必要があるのかを、自分の生活に照らして判断します。
まず一週間の通勤と生活への影響を記録し、社内で相談したい変更を一つ決めてください。調整を試せたら、決めた時期に負担が減ったかを振り返ります。改善が難しい場合は、好きな仕事内容を残しながら、続けられる通勤条件の求人を調べる。それも、仕事を長く続けるための選択です。
