部下が同じミスを繰り返す原因は?再発を防ぐ7つの確認と伝え方

部下と管理職が仕事の手順と再発防止策を確認している様子 マネジメント

部下へ一度説明したのに、同じ入力ミス、確認漏れ、連絡忘れが起きると、「前にも言った」「もっと注意してほしい」と感じることがあります。顧客や他部署へ影響が出ていれば、管理職として厳しく伝える必要がある場面もあります。

ただし、「次から気をつけます」と約束させるだけでは、再発を防げません。本人の知識や行動だけでなく、指示、手順、情報、業務量、確認方法、相談しやすさのどこでミスが起きたかを分ける必要があります。

この記事では、20年以上のマネジメント経験も踏まえ、部下が同じミスを繰り返すときに確認する7つの原因、本人への伝え方、再発防止策の決め方を解説します。

結論:注意する前に「どの工程で、なぜ防げなかったか」を確認する

同じミスが起きたときは、次の順番で対応します。

  1. 事実と影響を整理する
  2. 本人に作業の流れを説明してもらう
  3. 前回と同じ原因かを確認する
  4. 人、仕事、情報、環境、管理のどこに要因があるかを分ける
  5. 次回の作業で実行できる対策を決める
  6. ミスを早く発見できる確認方法を置く
  7. 実行後に対策の効果を見直す

厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」は、ヒューマンエラーを原因ではなく結果として捉え、人を訓練するだけでなく、間違えにくい仕組み、早く発見できる仕組み、影響を小さくする仕組みを組み合わせる考え方を紹介しています。

一般のオフィス業務でも同じです。本人が注意することは必要ですが、注意力だけに依存する対策は忙しさや割り込みで崩れます。「本人が間違えない」だけでなく、「間違えても発見できる」「影響が広がる前に止められる」状態をつくります。

最初にミスと意図的なルール違反を分ける

同じ結果でも、意図しないミスと、ルールを理解した上で省略した行動では対応が異なります。

状況最初に確認すること
やり忘れ送信前の確認を忘れた確認のきっかけがあったか
やり間違い別の顧客データを入力した画面やファイルを識別できたか
判断間違い問題ないと考えて承認した判断基準と必要情報があったか
知識・経験不足例外処理を知らなかった教育と参照資料が十分だったか
意図的な省略時間がないため確認を飛ばしたなぜルールを守れない状態だったか

意図的な省略だからといって、本人の姿勢だけで終わらせないでください。手順が現実の業務量に合っていない、周囲も省略している、期限と品質の優先順位が曖昧など、管理側の問題が隠れている場合があります。

部下が同じミスを繰り返す7つの原因

期待する結果と完了基準が曖昧

上司は「確認してから送る」と伝えたつもりでも、何を確認し、どの状態なら完了かが共有されていないことがあります。

「数字を確認する」ではなく、元データとの一致、対象期間、単位、合計値、承認者など、確認項目を具体化します。本人と上司で完成状態の見本を見ると、言葉だけのずれを減らせます。

手順が複雑で、やり方が人によって違う

同じ仕事に複数の手順がある、例外が多い、古いマニュアルが残っている場合、本人が正しい方法を選べません。

作業手順を増やす前に、不要な工程を減らし、順番をそろえ、最新の正本を一つにします。手順書の更新日と管理者も決めてください。

必要な情報が不足している、または変更が伝わっていない

担当者、価格、期限、仕様などが変わっても、本人が古い情報で作業していることがあります。チャット、メール、会議資料へ情報が分散していると、経験者でも見落とします。

どの情報を正本とするか、変更時に誰がどこへ記録するか、作業前に何を確認するかを決めます。

割り込み、業務量、期限に無理がある

複数業務の同時進行、頻繁な割り込み、睡眠不足や疲労は、確認漏れを起こしやすくします。厚生労働省の医療安全事例でも、複雑な業務、作業中の割り込み、多重業務などがエラーを起こしやすい状況として挙げられています。

ミスが起きた時間帯、同時に抱えていた仕事、直前の割り込み、期限設定を確認します。重要作業を行う時間を確保し、通知を止める、受付担当を分ける、期限を調整するなど、環境を変えます。

知識や経験が足りず、例外を判断できない

通常の手順は理解していても、例外が起きると判断できない場合があります。本人へ「分からなければ聞いて」と伝えるだけでは、何が例外かを認識できません。

よくある例外、相談が必要な条件、判断に使う情報を事例で共有します。最初は作業前に本人の判断理由を確認し、経験が増えたら確認範囲を狭めます。

確認が本人の注意力だけに依存している

本人が作成し、同じ画面で続けて確認すると、思い込みに気づきにくくなります。

入力制限、必須項目、計算式、差分表示、チェックリスト、別の人による確認などを、リスクに応じて使います。すべてを二重確認にすると負担が増えるため、顧客・金銭・法令・個人情報など影響が大きい工程へ絞ります。

ミスや不明点を早く相談しにくい

部下が「怒られる」「能力がないと思われる」と感じると、問題が小さいうちに相談せず、自分で修正しようとして影響を広げることがあります。

ミスを見逃す必要はありません。事実と責任を確認しつつ、早期報告は評価する、相談時に最初から否定しない、緊急時の連絡先を決めることが大切です。部下が報告・相談してこないときの改善手順も参考にしてください。

再発防止につなげる7つの対応手順

事実と影響を整理する

本人と話す前に、日時、作業、期待した結果、実際の結果、発見した人、影響、暫定対応を整理します。

「また確認が甘かった」のような評価語ではなく、「顧客Aの見積書へ顧客Bの価格を入力し、送信前の承認で発見した」のように表します。

本人に作業の流れを説明してもらう

「なぜ間違えたのか」といきなり聞くと、本人は納得できる理由を作ろうとします。まず、作業開始から発見までに何を見て、どう判断し、何を行ったかを時系列で確認します。

この作業を始めてから送信するまで、見た情報と行った操作を順番に教えてください。

前回と同じ原因かを確認する

結果が同じでも原因は異なることがあります。前回は知識不足、今回は情報更新の漏れかもしれません。

前回の対策を本人が実行したか、実行できなかった理由は何か、対策を実行しても防げなかったのかを分けます。対策が機能しなかった場合は、同じ注意を繰り返さず設計を変えます。

原因を人・仕事・情報・環境・管理へ分ける

観点確認すること
知識、経験、理解、体調
仕事手順、複雑さ、例外、画面や帳票
情報正本、更新、伝達、識別しやすさ
環境業務量、期限、割り込み、作業場所
管理指示、教育、権限、確認、配置

一つのミスに複数の要因が関係することがあります。全部を一度に直すのではなく、再発への影響が大きく、次回までに変更できるものから着手します。

次回の作業で実行できる対策を決める

「意識する」「慎重に行う」ではなく、行動と仕組みで表します。

  • 作業開始時に最新の顧客一覧を開く
  • 送信前に宛名、金額、添付ファイルをチェックリストで確認する
  • 例外条件に該当したら上司へ相談する
  • 顧客名をファイル名と画面上部へ表示する
  • 重要な金額は元データとの差分を自動表示する

本人が実行すること、上司が変更すること、他部署へ依頼することを分け、期限を決めます。

早く発見できる確認方法を置く

ミスをゼロにする対策だけでなく、発見を早める対策を置きます。

作業直後、提出前、顧客送信前など、影響が広がる前の確認点を決めます。最初は上司や経験者が確認し、安定したらサンプル確認へ変えるなど、本人の習熟に合わせて調整します。

対策の効果を見直す

次回の作業後に、対策を実行できたか、同じミスを防げたか、別の負担やミスが増えていないかを確認します。

再発防止策は一度決めて終わりではありません。厚生労働省の再発防止に関する案内でも、取組内容を定期的に検証し、見直すことが重視されています。

部下へ伝えるときの会話例

行動の改善を求めるときは、事実、影響、本人の認識、次の行動を分けます。

昨日の見積書で、顧客Aへ顧客Bの価格が入力されていました。送信前に発見できましたが、そのまま送ると顧客との信頼や契約条件へ影響します。作業を始めてから確認するまで、どの資料を見て、どの順番で進めたか教えてください。前回決めた確認方法で実行しにくかった点も確認し、次回の対策を一緒に決めたいです。

叱責を避けるために曖昧に伝えるのではありません。影響と改善の必要性は明確にしつつ、人格や意欲を決めつけないことが重要です。詳しい伝え方は部下へのフィードバックの伝え方で解説しています。

再発防止になりにくい5つの対応

「次から気をつけて」で終える

注意力が下がったときに同じミスが起きます。次回の具体的な行動と確認方法を決めてください。

すべてを二重確認にする

確認作業が増えすぎると、形だけのチェックになります。影響が大きい工程、自動化できない工程、間違いが起きやすい工程へ絞ります。

ミスのたびに手順を追加する

手順が複雑になるほど、新しいやり忘れが生まれます。追加する前に、不要な工程や重複した資料を減らします。

人前で強く叱る

早期報告や周囲からの指摘が減り、問題の発見が遅れる可能性があります。緊急対応と個別のフィードバックを分けます。

仕事をすべて取り上げる

高いリスクを一時的に止めることは必要ですが、恒久的に取り上げるだけでは本人が学ぶ機会を失います。範囲を小さくし、確認点を増やして再挑戦できる条件を決めます。

上司だけで対応しない方がよい場合

次の場合は、人事、情報セキュリティ、法務、品質管理、産業保健スタッフなど、社内の専門担当へ相談します。

  • 顧客、金銭、法令、個人情報、安全へ重大な影響がある
  • 意図的な隠蔽や改ざんの可能性がある
  • 業務量や長時間労働が継続している
  • 本人の通常の状態から大きな変化がある
  • 体調への配慮や就業上の判断が必要である
  • 複数の人が同じミスを起こしている

複数の人が同じミスをする場合は、個人より仕事の仕組みに原因がある可能性が高くなります。

再発防止チェックリスト

  • 事実と評価を分けて整理したか
  • 本人の作業を時系列で確認したか
  • 前回と今回の原因を分けたか
  • 人、仕事、情報、環境、管理を確認したか
  • 「気をつける」以外の対策があるか
  • ミスを早く発見できる確認点があるか
  • 本人と上司の担当、期限を決めたか
  • 対策後の確認日を決めたか
  • 対策によって別の負担やミスが増えていないか

まとめ

部下が同じミスを繰り返すときは、本人の注意力だけを原因にせず、どの工程で、なぜ防げなかったかを確認します。期待する結果、手順、情報、業務量、経験、確認方法、相談しやすさを分けてください。

本人には事実と影響を明確に伝え、作業の流れを説明してもらいます。その上で、次回に実行する行動、間違えにくい仕組み、早く発見する確認点を決めます。

再発防止は、注意や手順を一度追加して終わりではありません。次の作業で実行できたか、ミスを防げたか、新しい負担が生じていないかを確認し、対策を更新してください。

参考資料

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