中堅・ベテラン社員の育成は何をする?管理職を目指さない部下との成長課題の決め方

自分の考えを説明するリーダー候補と、話を聞く上司や同僚(AI生成のイメージ画像) マネジメント

仕事は安定して任せられる。ただ、「次は管理職を目指そう」と話すと、本人は乗り気ではない。中堅・ベテラン社員の育成では、昇進を目標に置いた途端、話が止まることがあります。

管理職を目指さないことと、成長したくないことは別です。専門性を深める、難しい判断を言葉にする、他の人が仕事を進められる仕組みを作るなど、今の経験から伸ばせる方向は複数あります。上司が行いたいのは、本人の希望と職場で必要な役割が重なる、小さな実践課題を一つ決めることです。

ここでは、人を管理する役割への登用を前提にしない育成を扱います。本人が管理職に関心を持っている場合は、次期管理職候補の育成課題を参照してください。

「今後どうなりたい?」で止まったら、最近の仕事から聞く

将来像をすぐ言葉にできない人もいます。答えが出ないまま「目標を考えてきて」で終えると、本人が望んでいない資格取得や昇進を、面談用の目標として挙げることになりかねません。

最初は、最近の具体的な仕事から聞いてみてください。

  • 最近、自分の経験が役立ったと思えた仕事は何か。
  • 周りから頼られるが、自分ではまだ判断に迷う場面は何か。
  • 今の仕事で、もう少し深く扱ってみたい領域はあるか。
  • 今後も続けたい仕事と、少し減らしたい仕事は何か。

管理職を希望しない理由も、「責任を負いたくない」と決めつけません。専門の仕事を続けたいのか、人事評価を担当したくないのか、今は負荷を増やせないのかで、相談できる課題は変わります。私生活の事情まで無理に聞き出す必要はありません。

会話の例(架空):「昇進の話を先に進めるのではなく、今の仕事で深めたいことを聞きたいです。難しい問い合わせを解く仕事と、後輩へ判断の根拠を伝える仕事では、どちらに関心がありますか。今はどちらも増やしたくない、という答えでも構いません」

本人が選べる余地を残しながら、会社として必要な仕事も説明します。対話の基本は、部下の希望や困りごとを聞く1on1の進め方で確認できます。

年齢や勤続年数ではなく、伸ばす役割を選ぶ

経験が長いから全員を指導係にする、若手より詳しいから新しい道具も一人で覚えてもらう、といった割り当ては避けたいところです。得意な仕事と、今後担いたい仕事が一致するとは限りません。

厚生労働省の職場における学び・学び直し促進ガイドラインでは、役割や必要なスキルの明確化、経験の棚卸し、企業と本人の目標のすり合わせを示しています。以下は、それを現場の育成相談へ落とし込むための当サイトの例です。

昇進以外の成長方向と、小さく試す課題の例
成長の方向実践課題確認する変化
専門性を深める難しい案件一つについて、判断材料と複数の対応案を比較するいつもの方法を選ぶ理由と、使えない条件を説明できる
経験を言葉にするよく相談される判断を一つ選び、初めて担当する人向けの確認表にする別の人が確認表を使い、迷った点を本人へ返せる
専門領域を広げる他部署と一つの引き継ぎを見直し、双方の完成条件をそろえる自部署の都合だけでなく、相手の制約を踏まえて案を作れる
新しい方法を取り入れる現在の小さな作業で、新しい道具と従来の方法を比較する速さだけでなく、誤りや確認負担も含めて使い分けられる

指導や改善も、本人の役割にするなら仕事として扱います。「ベテランなのだから当然」と無制限に追加せず、範囲・時間・評価の扱いを明確にしてください。専門職制度がない会社では、制度があるかのように処遇を約束せず、どの成果を既存の評価項目で扱えるかを人事と確認します。

課題は「本人の関心・職場の必要・確保できる時間」が重なる範囲にする

本人の希望だけで業務上の意味が見えなければ、忙しい時期に後回しになります。一方、職場の都合だけなら、育成という名前の仕事の追加になります。次の三つを一緒に確認します。

  1. 本人に残るもの:どの知識や判断が、今後の仕事にも使えるようになるか。
  2. 職場への貢献:誰の、どの困りごとを減らすか。
  3. 実行条件:何を減らし、誰の協力を得て、いつ試せるか。

関心があるテーマでも時間が取れないなら、範囲を小さくするか開始時期を変えます。「自主的に取り組んで」と勤務時間外へ押し出さず、業務として任せる作業は業務計画に入れます。研修を使う場合も、受講することだけで目標を終えず、学んだ内容を実務で試す場の設計まで決めましょう。

合意した成長課題に新しい知識や道具の使い方が必要なら、本人がUdemyの動画講座から学ぶ方法もあります。経験年数ではなく、前提知識・学習内容・プレビューを見て選び、受講後に試す仕事も一緒に決めてください。会社の業務として取り組む場合は、受講時間と費用の扱いを先にそろえます。

[PR] Udemyで講座を探す

育成計画の記入例:熟練者の判断を、他の人が使える形にする

以下は架空の例です。問い合わせ対応に詳しい社員が、管理職は希望しないものの「同じ相談に何度も答える状態は変えたい」と話した場合を想定しています。

4週間で試す育成課題の記入例(架空)
決める項目合意内容
本人が伸ばす力頭の中で行っている判断を、初めての担当者へ説明する力
扱う範囲頻出する問い合わせのうち、一種類だけを対象にする
成果物確認項目、対応を分ける条件、判断を止めて相談する条件を一枚にする
減らす仕事・協力上司が定例資料の作成を一部引き取り、週1時間の作成時間を確保。別の担当者一人が試す
確認方法上司が確認した過去事例を使って試し、迷った箇所と説明を修正する。実際の顧客対応へ使う前に責任者が確認
振り返り2週目に対象の広さを調整し、4週目に使い手の迷いと本人の学びを確認

「マニュアルを作った」で終えるのではなく、他の人が判断できなかった箇所を見るのがポイントです。ただし、質問がゼロになることは目標にしません。例外を適切に相談できることも、仕事を引き継ぐための大切な条件です。

振り返りでは、本人の工夫と上司の支援を両方確認する

上司が見るのは、成果物の量だけではありません。「相手が迷う点に気づいた」「経験則が通用しない条件を見つけた」といった判断の変化を、具体的な場面で聞きます。

  • 最初の想定と違ったことは何か。
  • 他の人へ説明して初めて気づいた、自分の判断基準はあるか。
  • 次も使える方法と、今回だけの条件は何か。
  • 上司が減らすと約束した仕事は、実際に減っていたか。
  • 次も続けたいか。範囲を変えたいか。

うまく進まなかったときは、能力不足と決める前に、時間・情報・協力者がそろっていたかを確認します。本人が望まない役割なら、別の方向へ切り替えることも育成の判断です。

まず次の面談で「最近、経験が役立った仕事」と「今後少し深めたい仕事」を一つずつ聞き、試す課題と減らす仕事を決めてみてください。対話や任せ方を読書で補いたい場合は、管理職の悩み別に選ぶ本から、今の課題に合うものを選べます。

タイトルとURLをコピーしました