部下を育てたいのに、目の前の仕事で一日が終わる。声をかけても反応が分からず、「自分は管理職に向いていないのか」と考えてしまう。成果、育成、職場の雰囲気を同時に見ていると、何から変えればよいか迷いますよね。
2026年の管理職500人への調査では、日々の業務で難しいと感じることの最多は育成・能力開発の54.0%。次いで、仕事へのやる気を高めることが41.0%、仕事の進め方の改善が37.4%でした。
ただし、この順位は管理職の能力を採点したものではありません。この記事では調査結果を紹介した上で、困りごとを「関わり方」「仕事の条件」「組織で決めること」に分け、次の一歩を考えます。
管理職が難しいと感じる仕事ランキング【2026年調査】
出典は、リクルートマネジメントソリューションズの「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2026」図表4です。2026年6月にインターネットで実施され、同年8月31日に公表されました。
以下は、従業員100名以上の企業で働く管理職500人が、日々のマネジメントで難しいと感じる項目を複数選んだ結果です。調査には別に人事担当者500人も参加していますが、この表の分母には含めません。項目名は意味を変えずに短く整理しています。
| 順位 | 難しいと感じる仕事 | 回答割合 |
|---|---|---|
| 1位 | メンバーの育成・能力開発 | 54.0% |
| 2位 | メンバーの仕事へのやる気を高める | 41.0% |
| 3位 | 効率化に向けた仕事の進め方の改善 | 37.4% |
| 4位 | 既存業務と新しい挑戦の両立 | 35.4% |
| 5位 | メンバーの心身のコンディションのケア | 32.2% |
| 6位 | 自部署の業績・目標の達成 | 30.8% |
| 同率7位 | 組織全体で取り組む課題の提起 | 30.2% |
| 同率7位 | 職場のチームワークの向上 | 30.2% |
| 9位 | メンバーが希望するキャリア・働き方の実現 | 28.0% |
| 10位 | 他部署・社外との関係づくりと連携 | 26.8% |
| 11位 | コンプライアンス・労務管理の徹底 | 24.8% |
同調査の具体的な業務項目を回答割合順に整理。「その他」は0.4%、「あてはまるものはない」は12.0%でした。複数選択のため、割合を合計して100%にはなりません。
この調査だけで、企業規模を問わないすべての管理職の状況は言い切れません。また、「難しいと感じる仕事」と「受けたい研修」や「不足している能力」は別です。以下の対処法は調査結果そのものではなく、ジョブメによる実務上の提案です。
1位の育成は「何を教えるか」の前に、止まっている場面を見つける
「もっと主体的になってほしい」「成長してほしい」だけでは、部下も何を変えるか分かりません。まず、具体的な仕事のどの場面で止まっているかを見ます。
- やり方や判断基準を知らないのか
- 説明は理解したが、実際に行う機会がないのか
- 本人の判断で進めてよい範囲が曖昧なのか
- 失敗した経験や周囲との関係が、行動に影響しているのか
原因を決めつけず、実際の出来事を本人と振り返ります。「なぜできないのか」だけでなく、「どの時点で迷ったか」「何があれば次は進められそうか」を聞くと、教える内容や任せる条件を具体化できます。
たとえば架空の育成場面なら、「次の顧客対応を全部任せる」ではなく、「最初の状況確認は本人が行い、条件変更が必要なら上司へ相談する」と切り分けます。本人が試す仕事と、上司が見るポイントを一つずつ決めるところから始めてください。
面談で何を聞くか迷う場合は、1on1ミーティングの目的と進め方を参考にできます。研修を受けても行動へつながっていない場合は、研修後の実践と振り返りを設計する方法で、学習後の仕事を整えましょう。
2位のやる気は、励ます前に本人の見方を聞く
反応が薄い、周囲への対応が冷たい、挑戦を避ける。こうした行動があっても、すぐに「意欲がない」と決めつけないようにします。本人なりの理由や、過去の出来事が関係していることもあります。
部下の「塩対応」の背景を聞いた経験
私が関わった部下に、他部署の人への対応が冷たくなっていた人がいました。その態度を一方的に否定して改善を求めるのではなく、「本当はどうしたいと思っているのか」を聞き、なぜ今の対応になったのか、過去の経緯を確認しました。
本人の話では、相手に甘く対応していたところ軽く扱われるようになり、厳しくしなければいけないと考えるようになったそうです。背景を聞き、本人が本来ありたい姿を意識するようになったことで、冷たい対応になるケースは減りました。
これは私が経験した一例で、背景を聞けばすべて改善するという意味ではありません。ただ、行動だけを見て注意する前に、本人が何を守ろうとしているかを確かめるきっかけになります。
背景を聞くことと、業務上必要な対応を曖昧にすることも別です。本人の考えを理解した上で、関係者への返答や連携について、どのように対応するかを具体的に話し合います。
チーム全体の雰囲気が沈んでいる場合は、個人への励ましだけで対応せず、未達や失敗の後にチームの士気を立て直す方法で、事実と次の行動をそろえてください。
3位の業務改善は、頑張る人を増やす前に仕事の流れを見る
業務を効率化したいと考えても、各自が忙しく、改善に取り組む余裕がないことがあります。そのときは、すべてを一度に変えようとせず、繰り返している待ち時間や手戻りを一つ選びます。
たとえば「確認に時間がかかる」という困りごとなら、誰の確認を待つのか、必要な資料がそろっていないのか、判断権限が分からないのかを分けます。同じ待ち時間でも、対処は異なります。
仕事の流れを確認する手順は、業務フローを可視化して待ち時間・手戻りを見つける方法で整理できます。担当者の作業だけを速くするのではなく、不要な確認や二重入力、役割の曖昧さを確認してみてください。
学びで補うことと、組織で変えることを分ける
順位を見て、育成・意欲・改善の勉強を全部始める必要はありません。いま困っている場面を一つ選び、自分で変えられることと、上司や人事の判断が必要なことを分けます。
| 困っている場面 | 自分で試す・学ぶこと | 組織で調整すること |
|---|---|---|
| 面談しても次の行動が決まらない | 質問の仕方、具体的な事実の確認、振り返り | 面談時間や育成機会の確保 |
| 部下が新しい仕事に挑戦できない | 小さく任せる範囲と支援方法の設計 | 業務量、失敗時の扱い、権限の調整 |
| 改善案があっても動かない | 仕事の流れと問題の整理、小さな試行 | 部署間の合意、人員・予算、優先順位 |
心身のケアも、管理職がすべてを一人で担うものとして扱わないでください。部下の状態や業務上の困りごとを確認しつつ、必要に応じて人事・産業保健スタッフなど社内の支援先につなぐことも役割です。
動画などで学びたい場合は、「マネジメント全般」から広く探すより、「1on1で次の行動を一緒に決める」「業務の流れを整理する」など、試したい場面を決めます。講座名だけで選ばず、前提知識、扱う事例、練習内容を確認し、今ある仕事で試せるかを見てください。
順位よりも、自分の職場で次に変える一つを決める
ランキングは、自分以外の管理職もどのような仕事に難しさを感じているかを知る材料です。上位の項目を苦手だからといって、管理職として失格ということにはなりません。
まずは最近困った場面を一つ書き、「本人へ確認すること」「自分が試すこと」「上司や人事と調整すること」に分けてみてください。全部を抱えるより、誰と何を変えるかが見える形へ整理するところから始めましょう。
