仕事に役立つ勉強を始めたいけれど、何を選べばよいか分からない。AIや語学の話題を見ると気になる一方で、今の自分に必要なのか迷うこともあります。ほかの社会人が学んでいることを、選ぶ手がかりにしたいですよね。
産業能率大学総合研究所が2026年9月に公表した調査では、学習手段によって上位のテーマが異なります。eラーニングでは業務遂行スキル、動画・アプリでは職種や業務の専門知識が最も多く挙がりました。
ただし、これは自己啓発をしている正社員に聞いた、学習手段別の結果です。社会人全体の人気順位でも、「これを学べば役に立つ」という効果の順位でもありません。調査の上位項目を確認したうえで、自分の仕事へどう置き換えるかを考えていきます。
今回の調査で分かること・分からないこと
出典は産業能率大学総合研究所の「社会人の自己啓発における学習手段の実態調査」です。調査条件は次のとおりです。
- 公表日:2026年9月24日
- 調査期間:2026年3月19日〜22日
- 方法:インターネット調査
- 対象:20〜59歳、高卒以上、従業員10人以上の企業の正社員で、直近1年以内に自己啓発をした人
- 有効回答:842人
この調査の自己啓発は、業務外に自らの意思で、仕事に直接・間接に関わる知識やスキルを学ぶことです。主な学習手段ごとに200人ずつ、計1,000人を回収し、データ確認後の842人を分析しています。
そのため、回答者の人数比から「社会人の何割が動画で学んでいる」とは言えません。また、これから学びたいことではなく、主に利用する手段で現在学んでいるテーマを複数回答で尋ねた結果です。
学習手段別に見る、学んでいるテーマの上位3項目
公開図表をもとに、各手段内の上位を整理しました。複数回答なので、割合の合計は100%にはなりません。下表のnは、それぞれの手段を主に使う回答者数です。項目名は読みやすさのため一部短縮しています。
| 学習手段・母数 | 順位 | 学習テーマ | 割合 |
|---|---|---|---|
| 通信教育 n=174 | 1 | 問題解決・論理思考・企画など | 32.8% |
| 2 | 職種・業務の専門知識 | 32.2% | |
| 3 | IT・デジタルスキル | 28.2% | |
| eラーニング n=164 | 1 | 業務改善・生産性向上・段取りなど | 34.1% |
| 2 | IT・デジタルスキル | 30.5% | |
| 3 | 問題解決・論理思考・企画など | 28.7% | |
| 書籍・問題集 n=168 | 1 | 職種・業務の専門知識 | 37.5% |
| 2 | 資格取得・試験対策 | 31.0% | |
| 3 | 業界知識・業界動向 | 22.6% | |
| 動画・アプリ n=175 | 1 | 職種・業務の専門知識 | 27.4% |
| 2 | AI・生成AIの活用 | 22.9% | |
| 3 | 語学 | 21.1% | |
| セミナー・講習会・勉強会 n=161 | 1 | 職種・業務の専門知識 | 49.7% |
| 2 | 業界知識・業界動向 | 26.1% | |
| 3 | 資格取得・試験対策 | 20.5% |
出典:産業能率大学総合研究所「社会人の自己啓発における学習手段の実態調査」。学習テーマの公式図表から各手段の上位3項目を整理。公開図表自体は、いずれかの手段で上位3位以内となった8項目の抜粋です。
通信教育の1位と2位の差のように、小さな差もあります。順位だけで優劣を決めず、その手段で学ぶ人がどんなテーマに取り組んでいるかを見る資料として使ってください。調査ではeラーニングと動画・アプリを別群にしており、ここで両者を合算した順位は作っていません。
上位テーマを、自分が困っている仕事へ置き換える
ここからは調査結果そのものではなく、ジョブメからの実務上の提案です。「専門知識」「IT」のような大きな分野名のまま教材を探すと、候補が増えすぎます。まず、学んだ後に変えたい場面へ置き換えましょう。
専門知識は、理解できない判断や説明から絞る
業務の専門知識を学ぶなら、「会議で出てくる原価の違いが分からない」「顧客へ製品の選定理由を説明できない」など、具体的な場面を選びます。社内固有のルールが分からない場合は、一般の講座より、社内資料や担当者への確認が先かもしれません。
専門分野を最初から広く学ぶ必要がある仕事もありますが、目前の困りごとが一つなら、その判断に必要な基礎と例題を扱う教材から始める方法があります。
IT・AIは、使いたい道具より変えたい作業を決める
「AIを使えるようになる」だけでは、受講後に何を試せばよいか決まりません。たとえば「自分で作った文章案を比較して推敲する」「毎月の集計で同じ転記を繰り返さない」といった作業へ絞ります。これは学習課題を決めるための例で、特定の講座で実現できると保証するものではありません。
利用するツールやデータは職場のルールに合わせます。講座の演習へ、顧客情報や記入済みの機密資料を送らないでください。練習用の架空データで試し、実務へ移す際の確認方法も考えます。
段取りや問題解決は、次の仕事で使う形まで決める
考え方を聞いて分かった気になるだけでなく、「次の依頼で必要な工程と待ち時間を書き出す」「会議資料で事実と仮説を分ける」など、使う場面を決めます。
段取りに困っているなら、講座を探す前に作業時間と完了日時を見積もる方法を一件の仕事で試すこともできます。実際に試して分からなかった点が、次に学ぶ内容を絞る手がかりになります。
書籍・動画・研修は、練習したい内容に合わせて選ぶ
学ぶ人が多いテーマと、自分に合う学び方は別です。操作の流れを見て試したいなら動画、必要な箇所へ戻って参照したいなら書籍、考え方への意見や対話が必要なら研修など、練習したいことに合わせて候補を比較します。媒体だけで決めず、教材の構成と支援の内容も確認してください。
動画講座を選ぶ場合は、タイトルだけでなく次を見ます。
- 自分の前提知識で理解できる内容か
- 困っている作業や判断がカリキュラムに含まれるか
- 演習があり、手を動かして確かめられるか
- プレビューの説明や進む速さが合っているか
- ツールを使う場合、利用環境や追加費用の条件が合うか
Udemyのような動画講座も、こうした条件を確認しながら探す選択肢になります。今回の調査はUdemyの利用者調査や講座評価ではありません。順位をそのまま購入理由にせず、自分が実践したい課題に合うかで判断しましょう。
迷ったら、ランキングから一つ選ぶ前に書くこと
候補を増やすだけで決められなくなったら、「困っている場面」「できるようになりたいこと」「試す仕事」を一行ずつ書いてみてください。学ぶ内容を絞る詳しい手順は、仕事に役立つ勉強は何から始める?課題から学ぶテーマを選ぶ方法で紹介しています。
学習時間を確保できないほど仕事が多い場合や、権限・情報がなくて仕事が止まる場合は、教材を増やすだけでは解決しません。仕事の条件を調整することと、知識を学ぶことを分けて考えます。
この調査は、他の人の学びを知る入口です。今の仕事に必要な一つを選び、試した結果を見ながら次の学びへ進む。その順番なら、人気の話題に追われず、自分のための勉強を決めやすくなります。
