新人の相談に付きっきりで、自分の仕事は終業後に回している。OJT担当者が「大丈夫です」と言うので任せていたら、最近は返事が短くなり、締め切りにも遅れが出てきた。上司として、何を変えればよいのでしょうか。
育成担当者の疲れには、教え方の助言より先に、仕事量・判断の責任・支援する人を見直す必要があります。担当を任せることと、育成を丸ごと一人へ預けることは別です。
この記事では、上司がOJT担当者を支えるための確認と分担を扱います。新人本人の育成計画は部下育成を最初の30日で進める手順に分けて整理しています。
「教える時間」だけで負担を見積もらない
説明している時間以外にも、教える内容の準備、成果物の確認、質問で中断した仕事の再開などが発生します。面談の予定が一日30分だから、負荷も30分とは限りません。
また、「どこまで注意してよいか」「本人がつまずいていることをどう上司へ伝えるか」といった迷いもあります。パーソル総合研究所が2025年に公表したOJTに関する調査では、教える人によって指示や内容が異なることが、新人側・教える側の双方から課題として挙がっています。個別の職場では、調査結果を当てはめるより、実際に何が負担かを本人へ聞くことから始めます。
「新人にどれくらい時間を使っている?」に加えて、次のように聞いてみてください。
- 新人対応のために、後ろへずれている仕事は何か
- 一人で決められず、迷ったまま対応していることは何か
- 同じ質問や確認が、どの場面で繰り返されているか
- 自分が不在のとき、新人は誰へ聞けるか
「教えるのが苦手なのでは」と能力の問題から入ると、担当者は助けを求めづらくなります。まず仕事が回る条件を確認します。
通常業務を何も減らさずに担当だけ追加しない
育成の時間を確保するなら、既存の仕事のどれをどう変えるかまで決めます。「忙しいと思うけどよろしく」では、調整を担当者に委ねたままです。
次は、二週間の受け入れ期間を想定した架空の調整例です。時間や分担は、職場の業務量に合わせて決めてください。
| 業務 | 対応の例 | 上司が確認すること |
|---|---|---|
| 毎週の定例資料 | 集計部分を別の担当へ移し、OJT担当者は最終確認のみ | 引き受ける人にも時間があるか |
| 新人の成果物確認 | 一日の中で確認する時間を決める | その時点まで待てない案件の連絡先 |
| 経験のない案件の質問 | 専門担当へ接続し、OJT担当者が抱え込まない | 新人へ質問先が案内されているか |
| 育成の進め方の見直し | 上司と担当者で短く振り返る | 困りごとを報告しただけで終わっていないか |
別の人へ移すだけでは、負担の場所が変わるだけの場合もあります。省略できる作業、期限を延ばせる作業、上司が引き取る判断も含めて考えます。全体の偏りが大きいときはチームの業務分担を見直す方法で、受け手の余力まで確認してください。
担当者に任せることと、上司が持つことを決める
OJT担当者は日々の仕事を教えられても、配置や目標、評価の最終判断まで任されるとは限りません。権限がないのに責任だけを感じているなら、境界を明確にします。
- 担当者:業務手順の説明、練習の確認、日々の疑問の受け付け
- 上司:到達目標、業務量、配置や優先順位、評価に関わる判断
- 専門担当・他のメンバー:特定分野の説明、不在時の問い合わせ対応
これは分担の一例です。実際の役割名より、「この相談は誰が判断するか」が新人にも分かることを優先します。体調や対人トラブルの相談をOJT担当者だけで受け止めず、必要な窓口へつなぐことも上司の役割です。
【上司から担当者への伝え方の例】日々の進め方は引き続きお願いしたい。ただ、締め切りや担当範囲を変える判断は私が持ちます。育成に時間を使って既存業務が遅れそうなら、あなたの段取りの問題として処理せず、優先順位を一緒に変えましょう。
質問を減らすより、質問してよい場所を作る
担当者の負担を減らそうとして「まず自分で調べて」とだけ伝えると、新人が分からないまま作業を進めるおそれがあります。待ってよい疑問と、その場で確認すべき疑問を分けましょう。
例えば顧客への回答、金額、情報の取り扱いなど、誤ると影響が大きい内容は早めに確認します。資料の書式や次回説明できる操作などは、疑問をまとめて聞く時間を設ける方法があります。
質問の記録は、新人を監視するためではなく、説明を再利用するために使います。「どこまで試したか」「何が分からないか」「教わった内容」を短く残し、担当者以外でも答えやすい状態にします。同じ質問が続くなら、説明不足、手順の曖昧さ、練習機会の不足も確認してください。
担当者へのフィードバックも、支援とセットにする
教え方を見直す場合は、「もっと優しく」「分かりやすく」という感想だけで終えないようにします。具体的な場面を見て、どこを変えるかを話します。
【振り返りの例】昨日の説明では、判断の理由まで伝えていた点がよかったです。一方、操作を全部見せた後に本人が試す時間がありませんでした。次は一工程ずつ練習する形にできそうでしょうか。そのために、午後の定例作業はこちらで調整します。
研修や本で教え方を学ぶ場合も、学習時間と実践の機会が必要です。担当者の負荷を放置して受講だけ追加しないでください。上司自身の支援方法を学び直したい場合は、管理職の悩みから本を選ぶための案内も参考になります。
一度調整したら、仕事が戻っていないかまで確認する
会議で分担を決めても、現場では「結局いつもの担当者に聞く」状態へ戻ることがあります。次の確認では、計画どおりかを責めるより、戻ってしまった理由を見ます。
- OJT担当者の通常業務は、実際に減ったか
- 不在時の質問が一人へ集中していないか
- 新人が質問を控え、作業を止めていないか
- 上司へ上がった課題について、判断と調整が返っているか
担当者に「頑張って」と伝える前に、今週減らす仕事と、上司が引き取る判断を一つずつ決めてください。教える人を支える仕組みがあってこそ、新人への支援も続けられます。
