手順を変えて仕事は早くなった。でも、改善報告で「どれだけ効果が出たの?」と聞かれると、数字で説明できない。時間に人件費単価を掛けてよいのか、本当に経費が減ったと言ってよいのか、迷うことがあります。
業務改善の効果を測るときは、作業時間の変化、品質や待ち時間の変化、実際の支出の変化を分けます。短くなった時間は大切な成果ですが、それだけで給与や外注費が同額減るとは限りません。
この記事では、改善を実行した後に、続けるか、修正するかを判断するための測定と報告を扱います。改善対象の選び方や業務の作り直しは、BPRで廃止・統合・再設計を判断する方法で確認できます。
前後を比べる前に、何を数えたかをそろえる
改善前は複雑な案件が多く、改善後は簡単な案件だけだったら、平均時間の差をすべて改善の成果にはできません。人数や件数が違う月の総時間だけを比べても、理由は分かりにくくなります。
まず、次の条件を測定メモへ残しましょう。
- 対象:どの種類の仕事・案件を測るか。対象外も書く。
- 開始と終了:受付から完了までか、担当者が作業した時間だけか。
- 含める工程:準備、確認、修正、問い合わせ対応を含むか。
- 期間と件数:いつの何件か。繁忙期や例外案件の有無。
- 取得方法:作業記録、システムの時刻、請求書など。
- 一緒に変わった条件:人員、件数、案件構成、別の施策など。
厚生労働省のIT業界向け資料では、機能・品質などを踏まえた評価基準と、日頃からの成果・プロセスの数値把握を挙げています。IT以外へそのまま同じ指標を当てはめるのではなく、自分たちの成果物と守る品質に置き換えて考えましょう。出典:厚生労働省「生産性の基準を設定し定量的に把握すべし」。
作業時間は、件数の増減と分けて説明する
以下の数字はすべて計算方法を示す架空の例です。ジョブメや特定企業の実績、一般的な改善率ではありません。
同じ種類の申請処理を対象に、改善前後で次の記録が取れたとします。作業時間には、一件ごとの準備・処理・確認・修正を含めています。
- 改善前:100件を合計2,000分で処理。1件平均20分。
- 改善後:150件を合計1,800分で処理。1件平均12分。
この場合、総時間は200分減っています。一方、処理件数は50件増えています。比較条件が十分に近ければ、一件当たりの時間は8分、40%短縮したと説明できます。
一件当たりの短縮率=(20分−12分)÷20分×100=40%
改善後の150件を、改善前と同じ平均20分で処理したと仮定すると3,000分です。実際の1,800分との差1,200分、つまり20時間は、「同じ150件を旧手順で処理した場合との比較上、抑えられた作業時間」と表せます。
この20時間と、前月より減った200分は別の数字です。足してはいけません。また、20時間は旧手順を同時に測った実績ではなく、平均時間を使った推計です。案件の難しさや担当者が変わっていれば、その分だけ比較の確かさも下がります。
新しい手順の維持確認に月2時間かかり、一件ごとの記録に含めていないなら、継続運用で生まれる余力の見込みは20時間−2時間=18時間です。最初の設定や研修に10時間かかった場合は、初回の負担として別欄に残します。都合のよい工程だけを測らないようにしましょう。
短縮時間の金額換算と、支出削減は別の欄に置く
架空例の18時間に、説明用の時間単価3,000円を掛けると54,000円相当です。これは時間を金額へ換算した参考値で、銀行口座からの支払いが54,000円減ったという意味ではありません。単価を使う場合は、社内の算定基準と、どの費用を含む単価かを確かめます。
実際の支出削減として報告するなら、外注費、残業代、利用料などの明細や契約条件で変化を確認します。基本給が同じまま空いた時間を別業務へ回す場合は、「処理できる仕事が増える余地」として扱えます。
たとえば別の架空例で、同じ作業範囲の外注請求が月80,000円から50,000円へ減り、新たに月12,000円のツール利用料が増えたとします。その他の支出が変わらないなら、この二項目による継続支出の差は月18,000円です。いずれも税抜でそろえた例です。
初期設定費や解約費があるなら、それも別に含めて評価します。また、同じ外注作業の削減を時間換算でも金額計上している場合、両者を足すと二重計上になり得ます。何を減らした結果の数字なのかを工程ごとに確かめてください。
製造現場を扱う原価計算の研究でも、時間短縮に伴う改善を金額で測る難しさが論じられています。ここでの事務業務の計算例は、その研究の実証結果ではなく、時間と支払いを混同しないための例です。参考:柊紫乃・上總健行「製造現場における改善効果測定と2種類の時間概念」。
早くなった代わりに、別の負担が増えていないか
作業時間が減っても、差し戻しが増えたり、依頼する側の入力が複雑になったりすれば、全体として良くなったとは言い切れません。主な改善指標に加えて、崩したくない条件を少数確認します。
- 品質:修正が必要だった案件数、確認漏れ、問い合わせの内容。
- 利用者の待ち:受付から使える状態になるまでの経過時間。
- 周囲の負担:申請者、後続担当、例外処理担当へ移った作業。
- 維持の負担:設定変更、データ確認、使い方の説明に必要な時間。
修正件数は、処理件数も添えて比べます。架空例として、改善前の100件中5件と、改善後の200件中6件なら、件数は増えていますが割合は5%から3%です。ただし件数が少なく、ミスの重大さも同じとは限りません。この差だけで品質改善が定着したと断定せず、内容と次の期間も確認します。
担当者の作業が10分減り、顧客が一日早く回答を受け取れる場合もあります。この一日は人が丸一日働いた時間ではないため、人件費換算せず、待ち時間の短縮として説明します。計測する工程が曖昧なら、作業時間と待ち時間を分けて業務フローを整理する方法を使ってください。
改善前を測っていなかったら、成果を作らず比較条件を補う
すでに手順を変えた後でも、過去の作業記録、処理ログ、請求明細などが残っていれば、同じ範囲を取り出せるか確認します。受付・完了の時刻だけから、担当者の実作業時間を逆算することはできません。記録が何を表しているかを確かめましょう。
過去の記録がない場合、「以前は一日かかっていた気がする」という記憶を実測値に置き換えないでください。参考の聞き取りと現在の実測を区別し、「改善前との比較はできないが、現在は一件平均何分」と報告できます。次の変更前から測定を始めることも、十分に意味があります。
試行直後は操作に慣れていない場合があり、逆に手厚い支援がある間だけ早い場合もあります。業務の発生周期に合わせて、通常運用を含む期間で再確認します。全業務に同じ測定日数を当てはめる必要はありません。
報告の最後は「次にどうするか」まで書く
報告は、改善率を大きく見せる場ではなく、続けるか、手直しするか、追加で確かめるかを決める材料です。次の順で短くまとめると説明できます。
- 変えた手順と、測定した対象・期間・件数。
- 実測できた変化と、仮定を使った推計。
- 品質、周囲の負担、実際の支出の変化。
- 同時に変わった条件と、まだ言い切れないこと。
- 継続・修正・追加観測の提案と、次の確認日。
改善に一部だけ関わった場合は、チーム全体の結果と自分の担当を分けて残します。個人の評価面談にも使いたいなら、根拠と自分の工夫を残す成果記録につなげられます。
測定表を作るために集計やグラフの操作を学びたいなら、「対象条件をそろえ、一件当たりの時間と件数を別々に表示する」を練習課題にすると選びやすくなります。必要な操作が講座で扱われるかは、仕事に使えるUdemy講座の選び方で、カリキュラムと演習内容から確認してください。まずは今ある記録と道具で測れる範囲を整理し、不足する操作が分かってから学ぶ方法を選べば十分です。
