A部署の会議に出ている間に、B部署の承認依頼がたまる。B部署の問題を片付けて戻ると、A部署から「最近、相談できない」と言われる。二つの部署を兼務すると、どちらにも十分に関われていない感覚が残ることがあります。
複数部署を兼務する管理職が最初に決めたいのは、時間の使い方だけでなく、不在時に進めてよい判断と、二部署の優先順位が衝突したときの決め方です。両方の部署が「いつでも上司に確認できる」前提のままでは、予定表を工夫しても承認待ちが残ります。
この記事では、一人の管理職が複数部署の責任者を担う場面に絞り、上位者・各部署の担当者と運営条件をそろえる方法を扱います。個人の業務量全般を減らす方法は、管理職の仕事を棚卸しし、上司へ相談する手順で確認できます。
兼務の目的と、いつ見直すかを先に確認する
欠員を埋める一時的な兼務なのか、関連する部署を一体で運営するためなのかで、必要な体制は変わります。前者なら後任の確保や育成、後者なら部署をまたぐ判断の整理が重要です。「当面お願い」のまま始めず、何ができれば兼務を終える、または体制を見直すのかを上位者へ確認します。
パーソル総合研究所が2022年に大手企業34社を対象に行ったヒアリング調査でも、管理職の兼務には人材不足のほか、組織機能やコストなどの理由が挙げられています。調査では上位者が傘下の管理職を兼ねる形が中心で、二部署の責任者を兼ねるケースの割合を示す資料ではありません。ここでは、兼務の理由を確認する参考として用います。パーソル総合研究所「管理職の異動配置に関する実態調査(2022)」
上位者との打ち合わせでは、次の四点をそろえてください。
- 兼務によって守りたい成果は何か。どちらの部署で何を優先するか。
- これまで自分が行っていた仕事のうち、減らす・移す・止めるものは何か。
- 自分が不在のとき、各部署で判断できる人と範囲をどう置くか。
- 体制を見直す日と、予定を待たずに相談する条件は何か。
「二部署とも今までどおり」を求められたら、従来の会議・承認・面談の予定を並べ、同時に対応できない場面を示します。兼務の辞令だけで、使える時間や支援者が増えるわけではありません。
二部署の仕事を同じ一覧に置き、優先順位を見えるようにする
A部署の予定表とB部署の予定表を別々に見ていると、それぞれの中では合理的な予定でも、同じ管理職の時間を取り合います。まずは次の数週間に自分の判断が必要な案件を、一つの一覧へ置きます。全員の細かな作業まで集める必要はありません。
記録するのは「部署・必要な判断・判断期限・遅れた場合の影響・代理判断の可否」です。案件名だけでは、同じ時刻に依頼が来たときに選べないため、期限の理由も確認します。「明日ほしい」のか、「明日の発送前に承認が必要」なのかでは扱いが違います。
優先順位は、声の大きさや自分の得意分野で決めないようにします。安全や顧客への影響、約束済みの期限、後工程が止まる範囲など、両部署に説明できる基準を上位者と合意してください。二つの部署で利害がぶつかり、自分の権限で決められない案件は、共通の上位者へ選択肢を出します。
同時に判断を求められたときの対応例
以下は架空の例です。A部署の顧客対応とB部署の新施策の承認が、同じ日の午後に重なりました。A部署の案件は当日中の判断が必要ですが、B部署は資料の完成日と承認希望日が同じになっているだけで、施策の開始まで余裕がありました。
この場合は「Aを先にする」で終えず、B部署へ「承認は翌朝。担当者はそれまで実施準備のうち、承認に依存しない部分を進めてよい」と伝えます。反対に両方が本当の期限なら、代理判断・対象縮小・期限交渉のいずれを使うか決めます。自分が夜に両方処理することを、恒常的な解決策にしないことが大切です。
不在時の窓口に、役割だけでなく判断できる範囲を渡す
各部署に「何かあったらまとめておいて」と頼むだけでは、窓口担当者が伝言係になります。現場で完了できる判断、管理職に戻す判断、さらに上位者が決める判断を分けます。会社の職務権限や承認手続きに沿い、必要なら正式な権限設定も相談してください。
| 場面 | 部署内で進める範囲 | 管理職へ戻す条件 |
|---|---|---|
| 通常の作業分担 | 合意済みの期限・品質を変えない担当調整 | 他部署の人員や期限にも変更が必要 |
| 顧客への回答 | 承認済みの説明と手順に沿う回答 | 新たな約束、契約変更、判断できない影響がある |
| 依頼の受付 | 必要情報を集め、対応可能な時期を確認 | 既存の優先案件を止めなければ受けられない |
これは役割整理の例であり、どの会社でも代理に渡せる権限という意味ではありません。「相談が必要」とされた案件には、連絡先と回答の目安も付けます。緊急時の既存の連絡手順がある場合は、それを優先し、兼務用の別ルートを乱立させないようにしましょう。
代理を担う人には、判断の練習と振り返りの時間が必要です。その人の通常業務を減らせないまま窓口だけ追加すると、負担の移し替えになります。担当と決定者の分け方は、役割分担と決定権をそろえる方法で詳しく扱っています。
会議はそろえすぎず、判断の記録だけを共通にする
兼務を始めると、二部署の定例を合同にしたくなるかもしれません。しかし、片方にしか関係しない報告を全員が聞く時間は増やさない方がよいでしょう。部署固有の確認は各部署で行い、合同にするのは人員の融通、共通顧客への対応、優先順位の衝突など、両方の参加が必要な論点に絞ります。
一方、管理職の判断記録は共通の形式にすると便利です。「何を決めたか・理由・誰に影響するか・次の確認日」が分かれば、別部署の会議で違う約束をすることを防ぎやすくなります。ただし、人事評価、個人の相談、顧客情報などは、必要な人だけが見られる場所で扱います。
定常的な承認や相談は、各部署で回答を見込める時間帯を設けます。「毎日いつでも」から「この時間に確認する」へ変えるなら、その時間を待てない条件も明示してください。相談件数が減ったことだけで順調と判断せず、判断待ちで止まった案件がないかを各部署の窓口へ確かめます。
関わる時間が違っても、評価の材料は両部署から集める
長くいた部署や、自分の専門に近い部署へ関与が偏ることもあります。必要な支援量が違えば、時間を機械的に半分ずつにする必要はありません。ただし、どの事情で今は片方へ時間を使うのか、いつ配分を見直すのかを説明できるようにします。
日常を直接見られないメンバーの評価を、印象や窓口担当者の話だけで決めないことも重要です。本人の説明、成果物、関係者から確認できた事実を、自社の評価基準に沿って集めます。相談したい人が窓口を通すことに抵抗を感じる場合もあるため、管理職本人と個別に話せる機会を残してください。
兼務を続けるかは、本人の頑張りより運営の状態で判断する
決めた見直し日には、二部署の判断待ち、期限変更、代理担当者の負担、管理職の時間外対応を確認します。特定の人が穴を埋めているだけなら、表面上の納期が守られていても体制が安定したとは言い切れません。
改善しないときは、部署内の権限調整だけでなく、担当範囲を減らす、後任の配置を早める、専任化するなど、兼務自体の条件を上位者と見直します。人員が必要な場合は、増員・業務削減・外注を比較する人員計画が判断材料になります。
まず二つの部署から、最近「上司を待って止まった判断」を一件ずつ集めてみてください。その二件について、次も自分が判断する必要があるのか、不在時には誰がどこまで進められるのかを決めることが、兼務の運営を変える出発点になります。
