転職活動についてインターネットで調べていると「転職エージェントランキング」や「転職サイトランキング」といった情報に遭遇しますが、それらの順位は12星座ランキングみたいなもの、もしくはそれ以下のものだと思ってください。
その理由は、転職サービスを紹介することで報酬をもらえることから、単価が高く、決まりやすい会社(一番儲かる会社)をランキングの上位にしているところが多いためです。
ネット上に転職サービス関連の情報が溢れかえっていて、何を信じたらいいのかわからない!という人に向けて論点と情報を整理しましたので、参考にしてみてください。
転職する目的を書き出してみよう
給料を上げたい、職種を変えたい、スキルアップしたい、労働環境を改善したい、人間関係を良好にしたいなど、人それぞれ理由はあるはずです。
転職活動の目的は「あなたにあった1社を見つけること」です。
それでは「あなたにあった1社」とはどんな会社でしょうか?
あなたは答えることができますか?もし、冒頭に書いた理由の粒度で転職活動を進めようとしているのであれば危険です。
うまくいかなかった場合、焦りが出てきます。
焦りが当初の目的を忘れさせてしまい、転職すること自体を目的にしてしまいます。そして、自身の条件をどんどん緩めていって、希望条件に合わない会社に転職するなんてケースもあります。
転職活動はかなりのパワーを使いますし、現職の会社にいた方がマシだったなんてことは避けたいですよね。
チェックシートをつくりましたので、転職の目的を整理したり、実現させたいことの優先順位を検討する際に活用してみてください。
転職支援サービスを理解する
最近ではリファラル採用(社員からの紹介)が採用コスト削減やマッチング率の高さから脚光を浴びていますが、依然として転職サイトや転職エージェント経由での就業が多くを占めています。
転職エージェントと転職サイトの違い
まず「転職エージェント」と「転職サイト」との違いを説明します。
転職エージェント | 転職サイト | |
---|---|---|
案件の探し方 | 希望やキャリアに合った就職先を紹介してもらう | 自分でサイト掲載企業を比較・検討して応募する |
特徴 | 転職活動の悩みや心配ごとをキャリアアドバイザーに相談できる | 自分のペースで転職活動ができる |
各種作業を代行してくれる(企業とのやりとり、予定調整など) | 企業と直接やり取りするのでスピーディ | |
応募書類の添削や面接対策などのアドバイスがもらえる | 未経験者歓迎の求人が多い |
大手の転職エージェントを比較する
NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社がおこなったNPSベンチマーク調査2019で調査された転職エージェント6サービスを大手と定義します。
- DODAエージェントサービス
- エン エージェント
- JACリクルートメント
- パソナキャリア
- マイナビエージェント
- リクルートエージェント
こういった調査は、市場シェアの高い企業から順に選ばれることが一般的です。聞いたことがあるサービスが多く、大手であることに異論はないかとおもいます。
※私が勤める会社も(他業界ですが)本調査の対象企業のため裏側を少し知っています
ちなみに「NPS(ネットプロモータースコア)」とは、企業やブランド、サービスに対する愛着や信頼を調査し、その結果を-100(悪い)〜100(良い)の数値で評価する手法です。
※詳細を知りたい人はこちらのサイトをみてください。
まずは転職エージェント間の結果です。
転職エージェント6社のうち、NPSのトップはジェイ エイ シー リクルートメント(-28.7ポイント)となり、最下位の企業との差は11.2ポイントでした。NPS平均は-35.5ポイントとなり、昨年比+2.0ポイントとなりました。
1位の会社であるJACリクルートメントしか書いていないため、各社の順位はわかりませんが、トップとボトムの差は11.2ポイントの差はあったものの圧倒的な差がついているわけではないようです。
また、年収が高いほど、転職エージェントを利用した方がNPSがよくなる結果が出ていることが特徴的です。
特に800万円以上の人は、転職エージェント1択でよいかと思います。おそらく管理職だったり、高い専門性を持っていることから、人材市場においても人気が高く、エージェントも優先的に案件を紹介してもらえます。また、企業から転職エージェントに支払われる紹介報酬も高いため、手厚くフォローしてくれます。
そして、ランキング結果1位のJACリクルートメントが高年収層に特化したサービスであることも影響していそうです。
これが、年収とNPSが比例している理由だと推測できます。
次にNPSの結果に影響を与えている項目についてです。本調査では20項目についてNPSへの影響度を調査されています。
その中で、重要度と満足度のギャップがもっとも大きかった項目は「自分にあった案件の紹介」だったようです。ここが期待外れだと、それ以外がよかったとしても転職の目的を満たすことは難しいですよね。
一方で、自分自身の転職の目的を整理できていないと、いくらアドバイザーに案件を紹介してもらってもピンとこないですし、整理した目的をうまくアドバイザーに伝えることができないと「自分にあった案件」を紹介してもらうことは難しいです。
キャリアアドバイザーのマッチング力による部分もありますが、自身でマッチングされやすくする努力は必要です。また、転職市場を把握せずに、あり得ない条件を伝えても当たり前ですが、希望にマッチる案件は出てきません。
2番目にギャップが大きかった項目は「年収・役職など希望にあった転職の実現」となりました。これは転職の目的を満たせたかどうかに当たる部分なので、重要なのは当然ですね。
ちなみに、開示されている項目は以下の8つでした(グルーピングしました)。
- 担当アドバイザー
- カウンセリング力
- 専門的な知識
- 応募先企業との交渉力
- 自分にあった案件の紹介
- スカウトメールの適切さ
- 結果
- 面接の通りやすさ
- 年収・役職など希望にあった転職の実現
- その他
- ウェブコンテンツの豊富さ・質
担当してくれるアドバイザーに対しての項目が多いことがわかるかとおもいます。つまり、担当してくれるアドバイザーの良し悪しが占める割合が高く、同じ会社だったとしても運が絡みます。
もし、「この人は違うな」と思ったら担当するアドバイザーを変える目的で、別の転職エージェントを検討することも一つの手です。
ただし、複数の転職エージェントを同時並行で利用することはおすすめしません。
転職ランキングサイトなどには、「転職エージェントは●社以上登録することをおすすめ!」と書いてあるコンテンツを見かけますが、1社のアドバイザーとやり取りするだけでも大変です。
離職中なら時間があるため対応できるかもしれませんが、就業中に複数のアドバイザーとやり取りすることはパワーを想像以上に取られますので、まずは1社とちゃんと付き合いましょう。そして、アドバイザーとの相性がよくないと思ったタイミングで、他のサービスを利用することを検討してみてください。
大手の転職サイトを比較する
同様に転職サイトについても、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社がおこなったNPSベンチマーク調査2019で調査された転職サイト6サービスを大手と定義します。
- BIZREACH(ビズリーチ)
- DODA(デューダ)
- Indeed(インディード)
- エン転職
- マイナビ転職
- リクナビNEXT
まずは転職サイト間の結果です。
転職サイト6社のうち、NPSのトップはIndeed(インディード)(-20.1ポイント)となり、最下位の企業との差は36.4ポイントでした。NPS平均は-44.0ポイントと、昨年比+0.5ポイントとなりました。上位2社のNPS平均が-26.4ポイントとなった一方、下位4社の平均が-52.7ポイントとなり、二極化の傾向が見られました。
また、12の要因別満足度すべてにおいて、NPS上位2社が満足度トップ2となり、上位企業と下位企業の間に満足度の差がみられる結果となりました。
1位のサービスであるIndeed(インディード)しか書いていないため、各社の順位はわかりませんが、トップとボトムの差は36.4ポイント、平均との差も23.9ポイントと圧倒的にIndeed(インディード)のNPS結果がよいことがわかります。
ちなみに掲載されている情報から2位の会社のNPSを算出すると-33.1となります。転職サイトはNPSにおいてはIndeed(インディード)の1強状態のようです。
年収別調査では、転職エージェントとは異なり、NPSの差があるとは言い難い結果が出ました。ここからも転職エージェントは年収によって、提供するサービスのクオリティや紹介できる案件に違いが出ることが推測できます。
次にNPSの結果に影響を与えている項目についてです。本調査では12項目についてNPSへの影響度を調査されています。
その中で、重要度と満足度のギャップがもっとも大きかった項目は「年収、役職など希望にあった転職の実現」だったようです。この記事でも書きましたが、「転職する目的」に該当する部分ですね。
次点以降にギャップが大きかったのは「求人案件の質の高さ」、「求人案件の情報の信頼性」など、情報の質に関する項目となりました。
開示されている項目は以下の7つ(グルーピングしました)。
- 求人情報
- 求人案件の質の高さ
- 業界や役職、年代等に特化した専門性の高さ
- 求人案件の情報の信頼性
- スカウトメールの適切さ
- 求人案件の豊富さ
- 結果
- 面接の通りやすさ
- 年収、役職など希望にあった転職の実現
どれも重要な項目であることはご理解いただけるかと思います。
ちなみに、転職比較サイトや転職サイトランキングでindeedを見かけることはありません。検索キーワード「転職サイト ランキング」でGoole検索し、上位10サイトを調べてみましたが、indeedは登場していませんでした。
今回取り上げた6社の利用者数をSimilarWeb(シミラーウェブ)で調査してみました。
圧倒的に利用者数が多いことがわかるかと思います。ちなみにビデオリサーチ社調べで、indeedのTVCM出稿量は日本でトップクラスです。ここまで利用者が多いのに、登場してこないのはおかしいですよね?
その理由は「indeedは転職サイトに紹介報酬を払う仕組みを用意していない」からです。つまり、比較やランキングでindeedを紹介して、サイト訪問者がindeedを利用しても何のメリットもないんです。
転職ランキングサイトの情報に騙されないようにしましょう!
どちらの転職支援サービスを利用するべきなのか?
私のおすすめは、転職活動のタイミングで使い分けることです。
検討初期 | 転職サイトで転職市場をざっくりと把握し、自身の希望を整理する |
それ以降 | 転職エージェントに登録し、アドバイザーと活動を進める |
職種を変更するなど未経験の領域に挑戦する際は、未経験歓迎の案件が比較的掲載されている転職サイトの活用も検討してください。
最後に・・・
転職活動によって他の会社を知ることで、現職のよい点が見えてくるかもしれません。そんな時は、転職することにこだわらず、現職で頑張るという選択肢を持っておくことも大切です。転職の目的を整理した時と前提条件が変わったのであれば、その後のアクションを変更することが必要です。
また、転職活動は市場の動き(需要)と自分のタイミング(供給)がマッチしていないと、自分にあった1社を見つけることができません。そういう意味では「運」が絡んできます。
自身が転職したいタイミングが、よいタイミングではない可能性があることを頭の片隅に置いて活動することで、余計な焦りを感じることが減ります。