ひとつ前の記事「転職理由ランキングを面接官の視点で解説する」で、転職者が語る転職理由が面接官の心に届くのかについて解説しました。
面接官をしていると「この転職理由で転職するの?」と感じてしまうようなことを、平気で口にしてしまう応募者の方にお会いすることがあります(本人からすると何気ない一言かもしれませんが)。また、面接中に発言されている内容に「矛盾」を感じることもあります。
そもそも、「本音の転職理由」を正直に伝えるべきでしょうか?
ひとつ目の答えは「本音と建前のバランス」を考えること。思っていることをそのままずばり言うことが正解ではありません。もう一つは「発言内容の一貫性」が大事です。
その理由を解説していきます。
転職者が語る転職理由の真偽のほどは?
転職社の実態を把握するために、エン・ジャパン株式会社がおこなったアンケート「転職コンサルタント100人に聞いた!転職理由の「本音」と「建前」」の結果を見ていきましょう。
2人に1人の転職者は、本当の理由を企業に伝えていない
こちらのデータは転職コンサルタント118人へのアンケート結果です。一人が100人担当していたとしても1万人以上の転職者の実態を反映したものとして見ても良いでしょう。
結果を見ると、半分以上の転職者は本当の理由を面接などの場で語っていないようです。
あなたはこの結果を見て、どのように思いましたか?多いと思われた方は「正直者」、少ないと思われた方は「嘘つき」かもしれません(笑)
そんなことはさておき、次のデータを見ていきましょう。
ポジティブな理由を前に出し、ネガティブな理由は控えめに
次のデータは企業に伝える転職理由と本当の転職理由を表したグラフです。
建前には「仕事の領域を広げたい」、「専門スキルや知識を発揮したい」という耳触りのよい転職理由、本音には「報酬をあげたい」、「職場の人間関係が合わない」、「評価に納得できない」、「上司と合わない」といったネガティブな転職理由においてギャップが大きくなっています。
一つの募集案件に何人もの転職者が応募してくる場合、複数の応募者の中から誰を採用するかを考えます。その時に自分だけが馬鹿正直に本音でネガティブな転職理由だけを語ってしまうと、他の応募者と比べて「ネガティブな人だな」という印象を与えかねません。
嘘ではない建前(1番のきっかけじゃないけど、思っていること)を面接の場では多めに語るようにしましょう。全く思っていない完全な嘘だと、面接の場でボロが出る可能性も高いですし、入社できた後に期待とのギャップで評価が上がらないということが起こり得ますので。
転職理由はストーリーの一部と位置付ける
さて、面接などで転職者から語られる転職理由には本音と建前があり、自身をよく見せようとする行為(嘘)が存在することはお分かりいただけたかと思います。
でも、面接官もバカではありませんので、そんなことは百も承知です。
それでは、どのように転職理由を伝えればよいのでしょうか?
「過去→現在→未来」の点を線でつなぐ
それは「過去と現在と未来」の各シナリオをストーリーでつなぐことが大切です。
仕事の領域を広げたいというニーズをかなえるために転職活動をしているケースを例をつくりました。
まずは、よい例についてみていきましょう。表の見方は「現在=転職理由」を軸に過去と未来をみてください。
時間軸 | シナリオ | シナリオ例 |
---|---|---|
過去 | これまでの行動 | ●●の仕事に関わるために行動をしたが実現しなかった |
現在 | 転職理由 | ●●の仕事の領域を広げるために転職したい |
未来 | キャリアビジョン | ●●についての第一人者として活躍したい |
転職理由である「●●の仕事の領域を広げるために転職したい」に対して、過去にどのような努力をしたのか?、それが将来の自身(キャリアビジョン)に対して、どのような位置付けにあるのか?に注目してみてください。
一貫性があることがわかるかと思います。
次に、悪い例についても同様に見ていきましょう。
時間軸 | シナリオ | シナリオ例 |
---|---|---|
過去 | これまでの行動 | ●●の仕事に関わるための行動はしていない |
現在 | 転職理由 | ●●に関する仕事の領域を広げたい |
未来 | キャリアビジョン | ▲▲についての第一人者として活躍したい |
良い例とは対照的に、過去と現在と未来に一貫性がないことがわかるかと思います。
「これまでの行動」「転職理由」「キャリアビジョン」をそれぞれの点で考えるのではなく、一つの線でつながるようにストーリーとして語ることが大切です。
仮に、ネガティブと捉えられがちな転職理由だったとしても、「これまでの行動」が伴っており、現在の環境では「キャリアビジョン」の実現が困難であることが面接官に伝われば、それはプラスに働きます。
ただし、難しいポイントは「これまでの行動」をどれくらいするべきというレベル感が面接官によって異なるところです。ここは完全な正解はありませんので、転職アドバイザーなどの第三者に確認してもらうことが大切です。
「過去→現在→未来」の線を実体験で面にする
「過去→現在→未来」を一つの線につなぐだけでも、面接官の感じ方は大きく変わりますが、さらに改善するためには、具体性のある実体験のエピソードを各シナリオに組み込んで、ストーリーに厚みを持たせることが不可欠です。
具体例を見ていきましょう。
時間軸 | シナリオ | シナリオ例 |
---|---|---|
過去 | これまでの行動 | ●●の仕事に関わるために、2年間に渡って■■な行動や▲▲な行動で、上司に働きかけたがダメだった |
現在 | 転職理由 | ●●の仕事の領域を広げるために転職したい |
未来 | キャリアビジョン | 過去に●●の仕事を通じて××を経験をした時に時間を忘れて没頭することができた。また周囲にもすごく感謝されやりがいを感じた。将来的にもニーズが高まると考えられるため、●●についての第一人者として活躍したい。 |
転職理由に厚みが出たと思いませんか?
ここで重要なのは「机上で考えた意見」ではなく、「過去の経験や過去に感じた感情」を元に語るところです。現在のあなたを構成するのは過去のひとつ一つの行動の積み重ねです。
こういった情報から、あなたが発信している内容の妥当性やあなたのポテンシャルを推し量っていき、最終的には合否が判断されます(当然、他にも現在保有している能力などをチェックし、仕事で成果を出せる人なのかを確認した上でですが)。
まとめ
いかがだったでしょうか?最後にまとめると次の三点に集約されます。
- 面接では本音と建前を語るバランスを気を付ける
- 転職理由(現在)は過去と未来を一つの線でつなぐ
- それらに実体験のエピソードを組み込み、面にする
特に募集している会社の人気が高ければ高いほど、優秀な人材が集まりますし、そういった人たちを見てきた面接官が求めるレベル感は高くなってきます。ちょっとした差で他の人が採用されるなんてことはありますので、念には念を入れて対策しましょう。
自身で考えることは重要ですが、転職アドバイザーなどの第三者に相談することで、面接の合格率を高める努力をしてみてはいかがですか?
最後に、アドバイザーに定評のある転職エージェントを紹介しておきます。
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