マネージャーになると成果が出ない原因|必要な3つのスキルと役割の切り替え方

チームの成果を高めるために対話するミドル世代のマネージャー 仕事術

プレイヤーとして成果を出してきた人でも、マネージャーになった直後に思うような結果を出せないことがあります。

これは、過去の経験が役に立たなくなったからではありません。成果の出し方と評価される対象が変わったのに、仕事の配分を切り替えられていないことが主な原因です。

プレイヤーは自分の担当業務で成果を出します。一方、マネージャーはチームが継続して成果を出せる状態を作ります。自分で一番難しい仕事を抱え続けると、短期的には進んでも、判断・育成・調整が後回しになります。

この記事では、カッツ理論の3つのスキルを手がかりに、役割転換で起きやすい問題と、プレイングマネージャーを含む実務上の切り替え方を解説します。

マネージャーになると成果が出にくくなる3つの原因

自分の成果を増やそうとする

プレイヤー時代は、自分の作業量や品質を高めることが成果につながります。しかし管理職になってからも同じ方法を続けると、自分に仕事が集中します。

自分が担当した方が速い場面は少なくありません。ただし、毎回引き取っていると、メンバーは判断を経験できず、マネージャーは重要な意思決定へ時間を使えません。

任せる範囲と判断基準が曖昧

「任せたつもり」でも、目的、期限、裁量、相談条件が共有されていないと、メンバーは細かな確認を繰り返すか、期待と異なる方向へ進みます。

委譲とは、作業だけを渡すことではありません。どこまで自分で決めてよいか、何が起きたら相談するか、何をもって完了とするかまで共有することです。

目の前の対応で管理の時間が消える

会議、問い合わせ、トラブル対応で一日が埋まると、採用、育成、目標設定、業務改善など、将来の成果を作る仕事が後回しになります。

管理の仕事は緊急度が低く見えるものが多いため、空いた時間に行うのではなく、先に時間を確保する必要があります。

マネージャーに必要な3つのスキル

Robert L. Katzは、管理者に必要な基本スキルを、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3つに整理しました。Harvard Business Reviewの原典では、管理者の有効性を性格ではなく、学び伸ばせるスキルとして捉えています。

参考: Harvard Business Review「Skills of an Effective Administrator」

マネージャーに必要な3つのスキルをカードで整理するミドル世代

テクニカルスキル:仕事の専門性を理解する力

テクニカルスキルは、業務で使う方法、手順、知識、道具を扱う力です。営業なら顧客理解や商談設計、ITなら開発工程やシステム理解、人事なら採用・評価制度の知識などが該当します。

マネージャーがすべての実務で最も詳しい必要はありません。ただし、品質や難易度を判断し、適切な質問をするための理解は必要です。

ヒューマンスキル:人と協働する力

ヒューマンスキルは、相手の状況を理解し、対話し、協力して仕事を進める力です。説明、傾聴、フィードバック、合意形成、対立の調整などを含みます。

大切なのは、全員へ同じ接し方をすることではありません。経験、理解度、仕事の状況に応じて、説明の粒度や確認頻度を変えます。

定期面談を成果につなげたい場合は、1on1の目的と進め方も参考にしてください。

コンセプチュアルスキル:全体を捉えて判断する力

コンセプチュアルスキルは、組織全体を捉え、複数の要素の関係を理解する力です。会社の方針、顧客価値、部門間の関係、将来のリスクを踏まえて、何を優先するかを決めます。

現場の一つの問題だけでなく、「なぜ起きているか」「ほかの部署へ何が波及するか」「今直すべきか、仕組みから変えるべきか」を考える行動として表れます。

職位が変わるとスキルの比重が変わる

3つのスキルは、どれか一つだけあればよいものではありません。担当する範囲が変わると、使う時間と求められる深さが変わります。

役割特に重視する行動注意点
プレイヤー専門知識を使い、担当業務を完了する自分だけが分かる状態にしない
現場マネージャー専門性を基に判断し、人を通じて成果を出す自分で仕事を抱えすぎない
部門責任者組織全体と将来を見て優先順位を決める現場から離れすぎて判断材料を失わない

管理職になった途端にテクニカルスキルが不要になるわけではありません。役職が上がるほど、個別作業へ使う比率を下げ、ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルへ時間を移します。

プレイヤーからマネージャーへ役割を切り替える方法

メンバーへ仕事を任せながら優先順位を確認するマネージャー

成果を「自分がしたこと」だけで測らない

マネージャーの成果には、チームの目標達成だけでなく、再現性、育成、リスク低減、他部門との連携も含まれます。

  • メンバーが自分で判断できる範囲が増えたか
  • 特定の人に依存する仕事が減ったか
  • 問題を早く発見できる仕組みができたか
  • 目標と優先順位がチームへ共有されているか
  • 次の担当者が育っているか

部下育成を後回しにしやすい場合は、部下育成の優先順位を上げる方法で、管理業務を予定へ組み込む方法を確認できます。

仕事を「自分・委譲・共同」に分ける

現在の仕事を一覧にし、次の三つへ分けます。

  • 自分が行う: 人事評価、重大なリスク判断、組織方針など、役割上手放せない仕事
  • 委譲する: 目的と基準を示せばメンバーが担当できる仕事
  • 共同で行う: 育成を兼ね、最初は一緒に進めて段階的に任せる仕事

委譲するときは、目的、期限、期待する成果、裁量、相談条件、確認日をセットで伝えます。作業方法まで細かく指定すると、相手が判断する余地がなくなるため、守るべき条件と任せる部分を分けます。

管理の時間を予定へ先に入れる

次の時間を、空き時間ではなく予定として確保します。

  • 週次の優先順位確認
  • 1on1とフィードバック
  • 採用・配置・育成の検討
  • リスクと業務量の確認
  • 中長期課題を考える時間

予定が埋まりすぎる場合は、会議を減らす前に、自分が参加すべき会議と情報だけ受け取ればよい会議を分けます。

プレイングマネージャーが両立するための仕事設計

小規模な組織、専門性が高い仕事、移行期のチームでは、マネージャーが実務を持つことがあります。プレイングマネージャー自体が問題なのではなく、担当範囲が際限なく広がることが問題です。

プレイヤー業務の上限を決める

自分の実務を「重要顧客だけ」「設計レビューだけ」「週の一定時間まで」のように限定します。緊急対応が続いた週は、翌週に管理業務の時間を戻します。

自分しかできない仕事を減らす

自分しかできない仕事が見つかったら、抱え続ける理由ではなく、手順化、共同作業、権限移譲の対象として扱います。すぐに完全移管できなくても、判断の背景を言語化すれば次の担当者を育てられます。

メンバーの意欲を一律に判断しない

仕事を任せた後の反応が弱いとき、意欲だけを原因にしないでください。目的、難易度、支援、評価、業務量が合っているかを確認します。具体的な対話方法は、部下のモチベーションが低いときの向き合い方で解説しています。

30日で確認する役割転換チェックリスト

1週目:仕事を可視化する

  • 1週間の仕事を記録する
  • プレイヤー業務と管理業務へ分ける
  • 自分が行う必要のない仕事を一つ選ぶ

2週目:一つ委譲する

  • 目的、期限、成果、裁量、相談条件を伝える
  • 途中の確認日を決める
  • 方法を指定しすぎず、判断の余地を残す

3週目:管理の時間を固定する

  • 週次の優先順位確認を予定へ入れる
  • 1on1または短い対話の時間を確保する
  • 中長期課題を考える時間を30分以上確保する

4週目:成果の見方を変える

  • メンバーが自分で判断できた事例を確認する
  • 自分への仕事の集中が減ったか確認する
  • 翌月に伸ばすスキルを一つ決める

初めて管理職になるときに読みたい本

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プレイヤーとしての成功体験から離れ、部下を通じて成果を出す役割へ切り替えるヒントを得たい人には『はじめてリーダーになる君へ』が向いています。本記事で整理した役割転換を、日々の部下との関わり方まで具体化したい場合に確認してください。

まとめ:成果の出し方を役割に合わせて変える

マネージャーになって成果が出にくいとき、過去の成功を否定する必要はありません。テクニカル、ヒューマン、コンセプチュアルの3つのスキルを、現在の役割に合わせて使い直します。

最初に行うことは、自分の仕事をすべて手放すことではありません。自分が担当すべき仕事、任せる仕事、一緒に進める仕事を分け、管理の時間を予定へ確保することです。

役割を見直した結果、管理職と専門職のどちらで強みを生かしたいか整理したくなった場合は、管理職から専門職へ転職するときの経験の棚卸しも使えます。転職の有無を決める前に、経験を具体的な行動と成果へ分けてください。

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