マネージャーの難しい仕事の一つに「部下に任せる」ということがあります。私自身も全然任せることができずに、マネージャーになった時は業務過多で休日にも働いていました(苦笑)
なぜ、部下に仕事を任せられないのか?
あなたがマネージャーになった理由に「メンバー時代に成果を出せたこと」がもっとも挙げられるのではないでしょうか?
つまり、周囲のメンバーよりも優れていたということです。
そんな人たちが部下に仕事を任せられないのは、以下の公式が頭の中にあるからではないでしょうか?
仕事の能力 = 上司 > 部下
そうすると「自分でやった方が成果が出せる」と思ってしまいます。
- 自分でやった方が早い
- 自分でやった方が正確にできる
- 自分でやった方がより深く考えられる
などが挙げられます。
部下に任せることができない結果として起きること
チームの生産能力が向上しない
あなたのチームの「メンバー仕事の能力値」を以下のように仮定してみます
あなた | 100 |
メンバーA | 50 |
メンバーB | 30 |
メンバーC | 20 |
合計 | 200 |
当然、あなたの能力が最も高いため、自分でやる方がスピードも早く、質も高くなります。ただし、あなたがボトルネックになってしまい、気合と根性で残業して対応するにしても、処理できるタスク量に限界がきてしまいます。
また、メンバーにちょっと背伸びしないとできない仕事を提供しないと、メンバーの仕事の能力値もなかなか伸びていきません。メンバーごとのレベルよりも少し難易度の高い仕事を小出しに与え、サポートをすることによってメンバーの「メンバー仕事の能力値」は高まっていきます。
あなた | 100 |
メンバーA | 70 |
メンバーB | 50 |
メンバーC | 30 |
合計 | 250 |
これを繰り返していくことによって、チームとしてこなせる仕事の量や質が高まっていき、チームとしての生産能力が高まっていきます。
自分自身の成長も止まってしまう
先ほどはチームの生産能力の話をしましたが、次はあなた自身の成長の話です。
「メンバー仕事の能力」と表現をしましたが、マネージャーのあなたがやるべきことは「メンバー仕事」ではありません(チームの状況としてやる必要があるタイミングもあるとは思いますが)。
「マネージャー仕事の能力」を高めていく必要があるのです。
そのためには前述の通り、メンバーの成長をサポートすることで、自身が「メンバー仕事」から離れられるような環境をつくっていく必要があります。
マネージャーの大事な仕事の一つに「育成」がありますが、任せるということは育成プロセスのスタート地点です。スタートした後には様々な困難(失敗や処理できないなど)が発生しますが、教えたり(ティーチング)、答えを引き出したり(コーチング)、メンバーによって使い分けていくことで乗り越えていきましょう。
最初は大変だと思いますが、徐々にサポートする時間も減っていくことで、「マネージャー仕事」に時間を振り向けていくことができるようになりますし、チームの生産能力が高まることによって、より成果を出せるチームにもなります。
それによって会社からの評価も高まることでしょう。
私が部下に仕事を任せられるようになったキッカケ
さて、長々と一般論を書いてきましたが、ここからが私の実体験の話になります。
私自身もメンバーとして成果を出し、マネージャーになりました。かなり速いスピードで昇格していったこともあり、天狗になっていました(笑)
元々、自身が細かい性格だったこともあり、全ての工程においてチェックをしていたので業務が溢れかえっていました。また、メンバーも私がチェックすることを求めてきていました。
「仕事の能力 = 上司 > 部下」の公式が、上司・部下のどちら頭の中に成立してしまっていたのです。
そんな私を変えた出来事があります。
優れたプロジェクトを表彰する「クリエイティブアワード」という制度があります。審査員(全従業員)が「このプロジェクトはいけている!」というものに投票し、一番多くの票を獲得したプロジェクトがアワードを受賞するといったものです。
当時の私はプレイングマネージャーだったので、自身でも案件を抱えていたため、エントリーをすることにしました。
過去に何度も受賞したことがあったため、「今回も獲ってやる」と意気込んでいました(笑)
私のチームのメンバーもエントリーし、二人とも最終選考まで残りました。私はメンバーに「絶対に負けないからね!」と闘争心を剥き出して対抗していました。
そして、プレゼン本番。無事にプレゼンを終え、手応えを感じていました。一方のメンバーのプレゼンもうまく仕上がっており、どちらが受賞してもおかしくない感じでした(他にも4〜5名プレゼンを実施)。
結果発表の時です。私のプロジェクトと名前が呼ばれることを心待ちにしていたのですが、メンバーのプロジェクトと名前が呼ばれました。
私は「おめでとー」と心からメンバーをお祝いしていました。
プレゼン前の意気込み的には「くそっ」っていう気持ちが湧いてきてもおかしくないくらいの感じだったのですが、その真逆の反応が出てきました。
その時に「メンバーが成長することの喜び」を感じることができ、マネージャーの役割を少し理解したように思います。
まさか、ゼロから基本を教え込んだメンバーに負けるとは思っていませんでしたが、これによって、より仕事を任せられるようになり、メンバーの考えを尊重・受容できるようになったことで自身の考え方の幅も広がりましたし、マネージャーとしての器も大きくすることができたなと振り返っています。
任せるときの心構え
私の経験談を交え、説明してきましたが、いかがだったでしょうか?
最後に任せるときの心構えをまとめておきます。
- チームの生産能力の向上を考える
- 失敗する前提でどっしりと構える
- メンバーの可能性を信じる
文章で書くと簡単そうな感じになりますが、実際には自身が手を出しすぎないようにする我慢が必要です。子育てしたことがある人はイメージが湧くかもしれませんが、初めてつかまり立ちから何もつかまらずに一人で歩き出す際には見守る(我慢)が必要です。
よくメンバー育成を育児となぞらえることがありますが、まさにそうだなと思っています。上記の3点を意識して行動を変えてみてください。
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