部下のモチベーションを上げる9つの方法

マネジメント

部下の中にはモチベーションが高いメンバーと低いメンバーがいます。会社からは「部下のモチベーションをあげるのも管理職の役割だ!」なんて言われて困っているマネージャーを目にします。

でも仕事で成果を出すためにはモチベーションを高めることが非常に大切です。

京セラやKDDIの創業者である稲盛和夫さんが、人生・仕事の結果は「考え方×熱意×能力」という公式をつくれらました。経営の神様とも言われる稲盛さんが、仕事で結果を出すための重要な要素の1つに「熱意」を挙げられています。

あなた自身のことを振り返ってみてください。モチベーションが高い時と低い時、どちらが仕事のパフォーマンスは高かったですか?おそらくモチベーション高く、仕事に取り組んでいたときではないでしょうか?

まずはこの記事で紹介する「モチベーションを高めるための3×3の型」を覚えてください。私自身もメンバーのモチベーションを高めようと考える際には、このフレームワークを用いて、「どこに課題があるのか?」「それを解決するアプローチはどれがよさそうか?」という感じで利用しています。

読んでいただければわかりますが、理解することは難しくありません。

それではさっそく「部下のモチベーションを上げる9つの方法」ついて解説していきます。

モチベーションとは?

まずは「モチベーション」という言葉を説明します。

モチベーションとは、「やる気」、「動機」、「意欲」などと和訳されます。また、「モチベ」と略されたりもします。モチベーションが上がる・下がる、あの人はモチベーションが高い・低いなどと使われます。

また、モチベーションには「内発的」と「外発的」の2種類が存在します。ビジネスにおける内発的動機、外発的動機についてまとめました。

内発的動機外発的動機
成長したい昇給・減給
仕事にやりがいがある昇格・降格
仕事が面白い評価の良し悪し
誰かの役に立ちたい人間関係

内発的動機は「成長」、「やりがい」、「役に立ちたい」など、自身の内からこみ上げてくる動機が挙げられます。一方で、外発的動機は「お金」、「他人の評価」、「人間関係」など、自身の外にある要因に左右する動機が挙げられます。

この記事では主に「内発的動機(内発的モチベーション)」を高めるきっかけのつくり方を説明していきます。

モチベーションを高めるための公式

モチベーションを高める方法をリンクアンドモチベーション社が、以下のような公式で整理しています。

やりたい!× やらなきゃ!× やれそう!

これらをさらに3つに分解した3×3=9つの方法について説明していきます。

やりたい!=目標の魅力

「やりたい!」とは「目標の魅力」のことです。 自分が行っていること、あるいはその成果として得られるものが魅力的であることが大切だということです。

目標の魅力はさらに以下の3つに分解されます。

ラダー効果

ラダー効果とは、業務を「行動」のレベルから「目的」や「意味」のレベルに引き上げて捉えてもらう方法のことです。

業務を行動から目的や意味レベルに引き上げることを説明するために、イソップ寓話の「3人のレンガ職人」が用いられます。

たまたま通りかかった旅人が、レンガ職人に「何をしているんですか?」と聞いた時の反応です。

職人A
職人A

そんなこと見ればわかるだろう。親方の命令で暑い日も寒い日もレンガを積んでいるんだよ。大変だからもういい加減こりごりだよ。

職人B
職人B

レンガを積んでを作っているんだよ。大変だけど、賃金がいいからやっているんだ。

職人C
職人C

教会の大聖堂をつくってるんだよ。完成すれば多くの人のこころのよろどころになるだろう。こんな仕事に就けて本当に光栄だよ。

いかがでしたでしょうか?

3人ともレンガを積むという作業は同じです。でも、目的や意味を理解しているかどうかの違いで、モチベーションの違いが生まれています。

あなたは部下に「この仕事やっといて」みたいな感じで、目的や意味も伝えず、作業だけを渡していたりしませんか?それでは職人Aや職人Bのようになってしまいます。

職人Cが話してくれたような、目的(教会の大聖堂をつくること)、さらにそれができた後にどんな未来が待っているのかというビジョン(完成後には多くの人のこころのよりどころ)を伝えることで、単なる作業じゃなくなり、部下はモチベーションを高めることができます。

スポットライト効果

スポットライト効果とは、本人の名前を取り上げて、みんながいる場で賞賛する機会を設ける方法のことです。

表彰制度としてトップセールスにスポットライトを当てる機会を設けている会社は多いです。また、営業職以外においてもMVPなどの表彰する機会を設けている会社もあります。

上記のような賞は会社が用意したものですが、上司であるあなたがスポットライトを当てる機会をつくってもよいのです。

例えば、あなたの部署の定例会で「●●さんの▲▲という行動は非常によかったね」などと賞賛することも有効です。頻度を高く、いろんなメンバーに対してスポットライトを当てることができます。

他には上司から部下だけではなく、メンバー同士で褒め合うような場を設けるなどで頻度を高めることもできます。

これと逆の効果を与えてしまうのが、みんながいる場で叱責することです。部下の尊厳を傷つけてしまいます。叱る場合は個室など他の人がいない場所でおこない、感情的に部下を怒るのではなく、ダメだった行動について叱りましょう。

オプション効果

オプション効果とは、業務内容や進行方法あるいは、報酬などを自分で選択してもらう機会を設ける方法のことです。

上司から決められたことだけをやらされるのではなく、複数の選択肢の中から自分で選んでもらうことで、やらされている仕事から自分ごと化された仕事になります。

具体的には、「AとBという仕事があるけど、どちらをやりたいですか?」とか、「連続で5日休暇取得するのと、1日ずつ5日休暇を取得するのとどちらがよいですか?」など、複数ある選択肢の中から選んでもらうことです。

余談になりますが、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのマイケル・マーモット教授の数十年にわたる研究プロジェクトで「社長は長生きする」という結果が出ています。

以下、選択の科学 P.41-42より引用

このような結果をもたらした主な理由は、職業階層の高さと仕事に対する自己決定権の度合いが、直接的に相関していたことにあった。上役はもちろん収入が高かったが、それより大事なことに、自分自身や部下の仕事の采配を握っていた。

企業の最高経営責任者にとって、会社の利益責任を負うことは、たしかに大きなストレスになるが、それよりもその部下の、何枚あるかわからないメモをページ順に並べると言った仕事の方が、ずっとストレスが高かったのだ。

仕事上の裁量の度合いが小さければ小さいほど、勤務時間中の血圧は高かった。さらに言えば、在宅中の血圧と、仕事に対する自己決定権の度合いとの間に、関係は認められなかった。

つまりこのことは、勤務時間中の血圧の急上昇を引き起こした原因が、自分で仕事の内容を決められないことにあることを、はっきり示していた。仕事に対する裁量権がほとんどない人たちは、背中のコリや腰痛を訴えることが多かったほか、一般に病欠が多く、精神疾患率が高かったのだ。

モチベーションの観点だけではなく、健康面の観点においても、部下に一定の裁量を持たせて選択してもらえるような工夫ができないかを考えてみてください。

やらなきゃ!=危機感

「やらなきゃ!」とは「危機感」のことです。ピンチに陥っている、あるいは今のままでよくない結果が待っていると、適切な危機感を持つことでやる気が出てくるという仕組みです。

危機感はさらに以下の3つに分解されます。

ライバル効果

ライバル効果とは、競争相手や競争機会を設ける方法のことです。

営業成績を壁に貼って営業マン同士を競い合わせるみたいな感じです。昭和時代のやり方を続けている会社がどれくらいかあるかわかりませんが、メンバー同士で競い合ってもらうことで「負けたくないので、もっと頑張るぞ!」とモチベーションを高める方法です。

スポットライト効果で紹介した「トップセールス賞」や「MVP」という表彰制度を通じて、ライバル効果を生み出すきっかけにもできます。

ちなみに、実力に差がありすぎるメンバー同士で競い合わせても、「どうせ勝てないしなぁ」という気持ちになるので、その点は注意する必要があります。

実力差が大きく、人数が多い場合はチーム化(能力差を勘案して)して、競い合ってもらうという方法もあります(これは次に紹介するリンク効果にも使えます)。

リンク効果

リンク効果とは、自分の業務と周囲との相互影響関係を示し、責任感を持たせることでモチベーションを高めてもらう方法です。

多くの仕事はチームで進めることが多いと思われます。例えば、Aさん→Bさん→Cさんという順番で作業した成果物をバトンタッチして仕上げていく仕事だったケースで、Aさんの仕事が遅れると、BさんとCさんが仕事に着手できるタイミングが遅れてしまいます。

大抵の仕事において締め切りが設定されています。BさんとCさんは当初予定していたスケジュールよりも短期間で作業を終える必要があり、迷惑をかけてしまいます。

文章として読めば、誰でも理解できることなので「当たり前じゃん!」って思われるかもしれませんが、他のメンバーに迷惑がかかることを敢えて伝えることで意識をしてもらうことができます。

コミットメント効果

コミットメント効果とは、周囲に対して目指す目標や成果などを宣言(約束)させる方法のことです。

上司から締め切りを伝えられた仕事で、仮に遅れてしまっても「上司の伝えてきた締め切りが短すぎたから仕方がないよね」って、心のどこかで甘えが出てしまいます。

でも、上司のあなたから部下に対して「いつまでだったらできる?」と問いかけて、「この日までならできます」と宣言してもらうことで、「自身で決めたことだしやり切らなければ!」という気持ちを生み出すことができます。

ただし、締め切りやクオリティなどの目標水準の妥当性については、うまく誘導しないと緩すぎる目標を出してくる部下もいるかもしれません。

また、誘導のしかたが下手だと、上司から押しつけられた目標になってしまい、コミットメント効果が得られないので要注意です。いかに「圧」を出さないかがポイントです。表情、態度、声のトーン、話すスピードなどに気を付けて問いかけてみましょう。特に声が大きく、話すスピードが速い人は威圧感を与えがちなので、いつもよりも抑えるように意識しましょう(これに限った話ではないですが)。

やれそう!=達成可能性

「やれそう!」とは「達成可能性」のことです。

何から手をつけていいのやらわからないと、どうしたら良いのかわからなくなり、「これは無理だ・・・」とモチベーションが下がってしまいます。

達成するための道筋や方法を明確にし、「達成できる!」とイメージを持ってもらうことでもチーべションを高めてもらうことを目的にした手法です。

達成可能性は以下の3つに分解されます。

ロールプレイング効果

ロールプレイング効果とは、日頃とは異なる立場を疑似体験してもらい、新たな視点を与える手法のことです。

具体的には、部下であれば上司の役割、営業であればお客さんの役割、新人であれば経営幹部の役割など、いつもとは違う役割を持つ人に徹底的になりきらせて、会議や議論に参加させてみるといつもと違った視点を得ることで、今までには見えていなかった解決方法を見出すことを期待した手法のことです。

営業職であれば、営業役とお客さん役をメンバー同士でなりきって、ロープレをしている人も多いのではないでしょうか?

ナレッジ効果

ナレッジ効果とは、専門家や経験者からノウハウを共有する機会を設けることで、達成可能性を感じてもらう手法です。

与えられた仕事をどのように進めれば終わらせることができるのか見えないとやる気がでなくなってしまうものです。仕事を進めるために必要な知識や考え方などが与えることで「仕事が前に進むイメージ」を部下に持たせることが重要です。

具体的な施策としては、部下に不足している知識などを補完してくれる社内外の勉強会への参加やアドバイス、マニュアルの提供などが挙げられます。

また、部下に不足している適切な情報をインプットするためには、部下の置かれている状況をキャッチアップする必要があります。常日頃から部下の仕事ぶりを観察することで、支援できることがないかを考えることも上司の役割の一つです。

フィードバック効果

フィードバック効果とは、周囲から本人に対して、プラス・マイナスの両面からフィードバックを与える手法のことです。

評価面談や1on1などを定期的におこなう会社であれば、そういった場でおこなうのがよいでしょう。

具体的な方法としては、以下の3つを意識して伝えるとよいでしょう。

  • 期待(ゴール)
  • 現状(スタート)
  • 期待値と現状の差分(要因)

もう少し、具体的に説明すると

期待:リーダーシップを発揮してもらいたいです
現状:●●プロジェクトでは周囲を牽引する動きが少し足りなかったですね
要因:もっと自分に自身をもってメンバーに接してみたらどうですか?

こんなかんじです。

期待、現状、要因の3つが揃うことで、効果的なフィードバックになるので、是非試してみてください。

また、上司からのフィードバック以外にも、同僚からのプラスとマイナス面のフィードバックを得ることも違った視点での気づきを得られることができるため有効です。特に同じ役職や立場同士の方が同じ目線の指摘なので、上司の指摘よりもすんなりと受け入れやすい人もいます。

会社の制度としてメンバー同士でフィードバックする機会が用意されていない場合は、自分のチーム内だけで試してみてはいかがでしょうか?

実施する際の注意点としては、相手の成長を思ってフィードバックする姿勢が大事です。それがない状態でマイナス面のフィードバックをするとただの悪口になってしまいますので。

最後に

全部で3×3の9種類のモチベーションを高めるための方法について説明してきましたが、いかがでしたか?

私は10年以上前にリンクアンドモチベーション社で今回記載した内容の研修を受けましたが、記載した内容を身に着け、実践するのは簡単ではありませんでした。
研修説明ページはこちら

研修ではワークを通じて、自身の課題について気づきを得られますし、アクションプランも立てないといけないので、「いい研修だったなぁ」と実践されないということにならないので受けてよかったなと思っています(私、回し者じゃないですよ 笑)

今回紹介していない方法以外にもモチベーションを高める術はあるかと思いますが、一番大切だと思うことは、メンバー一人ひとりの成長を考えて、適切に把握しようとする姿勢(≒愛情)だとおもっています。

テクニック部分だけを頑張って身につけても実践しても、どこか胡散臭い上司だと見えてしまうかもしれません。

一人ひとり抱えている課題は異なります。テンプレート通りに当てはめればうまくいくこともありますが、そんなに簡単じゃないのがマネジメントです。

あなたにとってメンバーのモチベーションを高めることの意味を「ラダー効果」になぞらえて考えてみてはいかがでしょうか?職人Cのような想いをもったマネージャーがこの記事をきっかけに一人でも増えてくれたら嬉しいです。

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